鮮やかなレッド〜オレンジ〜イエローのグラデーションが映えるサンバーストと、ハチドリ柄の大ぶりなピックガードが象徴的なハミングバード。
往年の人気機種であり、現行製品も豊富なバリエーションが展開されています。
エピフォン製品では、Hummingbird Pro、Hummingbird Studio、Masterbilt、Inspired by Gibson Hummingbird Standardなど時期によってシリーズ体系やモデル名が変わってきました。
ギブソン製品についても、Standard、Original、Faded、Special、Custom Shopなど多岐にわたり、価格順で並べるだけでは違いが分かりにくいと思います。
本記事では、ハミングバード各モデルの特徴や違いを、元楽器店員の視点から整理して解説していきます。
ハミングバードの特徴とDOVEとの違いを簡単に整理
最初にハミングバードの歴史を簡単に振り返っておきましょう。もともと1960年に登場したギブソン初のスクエアショルダー型アコースティックギターがルーツです。
ギブソンのアコギといえばJ-45など、なで肩のラウンドショルダーモデルが代表格。それに対峙するもう一つの定番がやや角張ったスクエアショルダーモデルとなっています。


平行四辺形を隣り合わせに並べた指板のポジションマークは「Double Parallelogram(ダブルパラレログラム)」インレイと呼ばれるデザインで高級感がありますね。
「Hummingbird」は高速で羽ばたくホバリングが有名な「ハチドリ」のことで、蝶々とハチドリがトランペットフラワーの蜜を吸っているモチーフの絵柄のピックガードが特徴です。
スクエアショルダーつながりで、ハミングバードと混同されやすい機種ではピックガードに鳩がデザインされたDOVEがあります。DOVEのほうは1962年にリリースされた後発モデルです。
Epiphone Inspired by Gibson Custom 1963 Dove Reissue
ピックガードだけでなく、ブリッジ形状も違いますね。ハミングバードはマホガニー材のサイドバックを基本とするのに対して、DOVEはメイプル材のサイドバックで製作されるモデルとして知られています。
ネックまわりも、ハミングバードは弦長24.75インチが標準、DOVEは弦長25.5インチが標準という違いがあります。DOVEのほうが甘さ控えめで、ブライトなサウンドになりやすい傾向ですね。
エピフォン版ハミングバードの種類とモデルごとの違い
それでは初心者から中級者向けのアコギで定番のエピフォンブランドから見てみましょう。
ハミングバードの基本デザインはオリジナルを踏襲していますが、ギブソン本家と違い、海外工場で生産を効率化することで販売価格が抑えられています。

現在市場に流通しているエピフォン版ハミングバードは大幅に機種が増えて、モデル選びが難しい状況になっているので順を追って解説していきます。
手頃な価格で選ぶならEpiphone Hummingbird Studio / Pro
まずはエピフォンでお手頃な価格帯のHummingbird Studio / Hummingbird Proが売れ筋モデルです。
Hummingbird Studioは2012年に登場したHummingbird PROの流れを汲むモデルで、販売店によってはHummingbird Studio / Hummingbird PROとして併記されることもあります。
そのHummingbird Studioは、近年Epiphone Studio Acoustic Collectionとしての再編が進んでおり、新仕様にアップデートされたバージョンが登場しています。
いったんカラーバリエーションで見分けるのが分かりやすいのですが、従来版のHummingbird StudioはFaded Cherry Burst、新仕様のHummingbird StudioはHeritage Cherry SunburstとAntique Naturalがラインナップされています。
新仕様のほうはエピフォンオリジナルの細長いヘッド形状から、1960年代のカラマズー工場期を彷彿させるギブソン風のヘッド形状に切り替わっているのがポイントです。
ネックシェイプもSlimTaper DからRounded Cに変更されてやや丸みのあるグリップになりました。
新旧モデルともにボディのサイドバックは合板(ごうはん)でコストを抑えつつ、サウンドへの影響が大きいボディトップのみ単板(たんばん)スプルース材にて製作されています。
ハミングバードスタジオは、チューニングが安定しやすいロトマチックタイプのペグを採用しており、アンプに繋げられるエレアコ仕様なのも人気です。
以前はShadow製のピックアップを搭載している時期もありましたが、最新版ではアンダーサドルピックアップFishman S-Coreと、プリアンプFishman Presys VTを搭載。
サウンドホールの内側についているノブでボリューム/トーンの調整ができるようになっています。
その他、新シリーズにはHummingbird Studio ECというカッタウェイ付きの派生モデルがあり、さらに2026年7月には簡素なデザインと合板材・ピックアップ非搭載で価格を抑えたHummingbird Tributeも登場しています。
本格仕様で選ぶならEpiphone Hummingbird Standard / 1960 Reissue
次はStudio / Pro系より本格的な仕様を求める方向けのエピフォン上位モデルです。
以前はInspired by Gibson Masterbilt Hummingbird(2020年11月発売)を紹介していましたが、現時点の上位モデルとして見るなら、2026年3月に発売されたInspired by Gibson CollectionのHummingbird StandardとHummingbird Standard ECが第一候補でしょう。
Epiphone Inspired by Gibson Hummingbird Standard Cherry Sunburst
カラーはCherry Sunburstで、「ソリッドスプルーストップ」「ソリッドマホガニーサイドバック」のオール単板仕様によって生鳴りの品質を重視したモデルといえます。
Epiphone Deluxeキーストンペグを採用したクラシックな佇まいで、Studioシリーズと同様に、Fishman S-CoreピックアップとFishman Presys VTプリアンプを搭載しているので、エレアコとしても扱いやすいです。
(同シリーズでは、Cobra BurstにCarolina Blue and Silverという独自色のピックガードをあしらったEric Church Hummingbird Darkが2026年7月に発表されています。)
また、エピフォン版ハミングバードに関してはさらなる上位モデルもあります。
2025年8月に発表されたInspired by Gibson Customシリーズの1960 Hummingbird ReissueとHummingbird Deluxe ECです。
Epiphone/Inspired by Gibson Custom 1960 Hummingbird Reissue Heritage Cherry Sunburst
端的にはギブソン・カスタムショップとのコラボレーション企画で、モンタナ州ボーズマンのギブソン・アコースティックチームの監修が入っています。
1960 Hummingbird Reissueは初期ハミングバードの復刻モデル。Hummingbird Deluxe ECは、ローズウッドサイドバックとカッタウェイを組み合わせたコンテンポラリーなカスタムモデルですね。
とりわけ1960 Hummingbird Reissueについては、ヒストリックコレクション由来のスペック(サーマリーエイジド処理など)を取り入れた意欲作です。
ピックアップにL.R. Baggs Element Bronze VTCを搭載したエレアコ仕様で、専用ハードケースも付属しています。
ギブソン版ハミングバードの種類とモデルごとの違い
ここから先は、ギブソン版ハミングバードのラインナップを見ていきます。
ギブソンのアコースティックギター製品は、1980年代末からアメリカ北部モンタナ州のボーズマン工場が生産拠点。2021年には工場の増床・増産がニュースになりました。
ギブソンでも近年どんどんハミングバードのバリエーションが増えており見分け方が大変なのですが、まずはギブソン公式のコレクション分類に沿って見ていくのが分かりやすいです。
以下、Modern Collection、Original Collection、Historic Collection、Murphy Labについて解説していきましょう。
定番モデルで選ぶならGibson Hummingbird Standard / Original
ギブソン版のハミングバードを選ぶ際には、Hummingbird StandardとHummingbird Originalの違いからチェックしていきましょう。
Hummingbird Standardは、Modern Collectionに属しておりカレントモデルの代表的な位置付けですね。
Gibson Hummingbird Standard Vintage Cherry Sunburst
数年前までは品名にStandard表記がなく、シンプルに「Gibson Hummingbird」と呼ばれている時期もありました。
カラーはVintage SunburstやVintage Cherry Sunburstといった王道色だけでなく、Southwestern Turquoise、Purple Burst、Translucent Tealなど、遊び心のあるフィニッシュも追加されています。
その一方、2020年から登場したHummingbird Originalは、Original Collectionに属しているヴィンテージ基調の製品です。
Gibson Hummingbird Original Heritage Cherry Sunburst
こちらはHeritage Cherry SunburstやAntique Naturalといった伝統的なカラーが中心。バインディングも少し飴色を帯びた、アンティーク調の質感に仕上げられています。
ナットやサドルが牛骨で、ピックガードの絵柄がエングレイブ(彫り込み)方式なことにも注目
ペグの仕様はStandardがロトマチックタイプ、Originalがキーストンタイプで差別化されており、音色面でも前者はタイトで伸びやか、後者は軽やかで素朴な響きに感じられるでしょう。
どちらもL.R.Baggs VTCピックアップを搭載しているので、ライブやレコーディングでも重宝してくれるモデルです。
Modern Collectionについては2024年から2025年にかけてラインナップが大幅に拡充されています。
カッタウェイ付きのHummingbird Standard EC、ローズウッドサイドバック仕様のHummingbird Standard Rosewood / Rosewood EC、薄めのボディ(コンサートデプス)で扱いやすいHummingbird Specialといった派生モデルですね。
その他、2022年10月に発売されたFadedシリーズのように艶消し塗装のバリエーション、Hummingbird Studio、Hummingbird Sustainable(生産完了)、Generation Collection G-Birdなどもあるので、まずはStandardとOriginalを基準にしてスペック比較していくのがおすすめです。
最高峰モデルで選ぶならGibson Custom 1960 Hummingbird Reissue
あとはヒストリックコレクションやマーフィーラボといったギブソン最高峰のハミングバードについてご紹介しておきましょう。
ヒストリックコレクションの主力製品は1960 Hummingbird Reissueです。
Gibson 1960 Hummingbird fixed
サーマリーエイジド処理されたシトカスプルース材トップを用いており、薄いラッカー塗装、ハンドスキャロップされたトラディショナルなXブレーシングなど丹念な作り込みがされています。
サーマリーエイジド処理は、酸素・湿度を厳密にコントロールしながら熱を加えることで、ヴィンテージのような経年変化を再現する狙いがあります。
1960 Hummingbird Adjustable Saddleのパーカッシブで歯切れの良いサウンドも人気がありましたが、現在は生産完了となっており、「力強くストレートなサウンド」のフィックスドブリッジ仕様が主軸になっています。

最後に、ハイエンドモデルとしてMurphy Labによるエイジド仕様も取り上げておきましょう。
Tom Murphy(トム・マーフィー)氏の技術やノウハウをもとに、長年使い込まれたヴィンテージギターの質感を再現したシリーズですね。
Gibson 1960 Hummingbird Light Aged
1960 Hummingbird Reissueをベースに、Ultra Light Aged、Light Aged、Heavy Agedといったエイジド加工の度合いが異なるモデルが展開されています。
マーフィーラボ以外のハイエンドモデルとしては、Hummingbird Deluxe(生産完了)やHummingbird Custom Koa、Hummingbird Ultimaなどのコレクターズモデルが少数製作されている状況です。
まとめ
エピフォン版ハミングバードは価格を抑えたStudio系、オール単板のStandard系が売れ筋モデルで選びやすいですね。
ギブソン版ハミングバードは、Modern CollectionのStandardとOriginal CollectionのOriginalについて予習しておくことで他モデルの特徴が理解しやすくなるでしょう。
ショップに新旧在庫が混在していることも、少々ややこしいですが本記事の内容を参考にしていただくと整理しやすくなると思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。








