みなさんEpiphoneのカタログモデルが2020年を境に大幅に刷新されたことはご存知でしょうか。旧シリーズよりギブソン本家に近い体系となっており、ヘッドの形状や電装系(エレクトロニクス)もリニューアルされました。
本記事ではエピフォンSGモデルのギターに注目していますが、「エピフォン・インスパイアドバイ・ギブソン・コレクション」の登場にともない旧・定番製品「G-400」や「G-310」といったモデルが生産完了になっているんですよね。
あらゆる舞台・あらゆる段階の人に向けた「EPIPHONE FOR EVERY STAGE」がブランドのコンセプトに掲げられているよ。
以下では楽器店員視点で「Epiphone最新SGモデルの違い・選び方」をカテゴリー別に全機種解説していきたいと思います。昨年より品薄・再入荷が滞っているモデルも多いですが、2024年1月の現行ラインナップ全体像を把握できるようになっていますのでチェックしてみてください。
ギター初心者向けエピフォンSGモデルの種類
ギター初心者向けのエピフォンSGモデルを見ていくに際して、ギブソンやエピフォンのSGに共通している特徴をおさらいしておきましょう。
まず、デザインの特徴として「ボディが薄く軽量なこと、ネックジョイント位置が浅くハイポジションまで弾きやすいこと」が挙げられます。
これはエレキギターに不慣れなビギナーさんでも練習のストレスを感じにくくなっていいですね。
重心のバランスに慣れが必要な場合もありますが、音色に適度な甘さがあり、またアンプで歪ませたときにも歯切れの良いサウンドが人気です。
コスパ重視のSGスペシャル・ヴィンテージエディションでエピフォンを気軽に体験
さて、最もお手頃なグレードであるSGスペシャルのVE(ヴィンテージエディション)は2017年に登場しました。近頃では「SG Special Satin E1 Vintage Worn」と表記されることもあります。
公式サイトに掲載されていない「カタログ外モデル」で、在庫状況が安定しない時期には価格が高騰していることもありますのでご注意ください。
本製品は記事中盤以降で紹介している他モデルと異なり、コストを抑えるために「ボルトオンジョイント」という「ネジ留めによるネック接合方式」で製作されています。
塗装もヴィンテージウォーンフィニッシュによるマットな質感だね。
カラー展開は「エボニー(黒色)、ウォルナット(茶色)、チェリー、ヘリテージチェリーサンバースト」のラインナップですね。
ピックアップに金属のカバーが付いていないタイプで、セラミックマグネット仕様の明瞭なサウンド。ボリュームやトーンの配置もシンプルなので手元の操作にも悩まされません。
全体サイズを小さめにアレンジしたパワープレイヤーズSGが2022年夏に新発売
続いて、ギター初心者向けモデルとして2022年7月に発売された製品、パワープレイヤーズSG(パワープレイヤーSG)をご紹介します。
上述したSGスペシャルVEと同様にボルトオンジョイントタイプのネックジョイントで、最たる特徴は7/8スケールを採用していること。
「8分の7サイズ」というのは聞き慣れない方が多いかもしれません。これはおおよその縮尺のため、商品説明文によっては「3/4+」と表記されていることもあります。
実際にネックの長さに着目してみると、ギブソンやエピフォンでは24.75インチ(約628.65cm)が標準のところ、本機種の設計では22.73インチ(約577.34cm)です。
「約5.1cm短くなっている違い」はイメージが掴みにくいかもしれませんが、「ミニギターの中では少し大きめの製品」くらいの表現がふさわしいでしょうか。
ネックの長さだけでなく、あわせてボディ側も小さくデザインされているものの、なかなか力強いサウンドであなどれません。
トラディショナルスタイルで選ぶエピフォンSGモデルの種類
ここからはもう少し上のグレードに分類されるSGモデルについての解説です。
現行Epiphone製品は「オリジナルSGコレクション」と「モダンSGコレクション」にギターの体系が分かれています。
以下に見ていく「トラディショナル路線のSGモデル」は前者に分類され、1960年代のギブソンを復刻することがコンセプトですね。
ボディとネックに使用されている木材はマホガニーで、Gibson系ギターに典型的な「セットネック構造」
そのうえで摩擦抵抗の少ない「グラフテックナット」や、弦振動の伝達ロスを縮減する「LockToneブリッジ」といった定評のあるパーツが採用されました。
また、2020年のアップデート以降は、ギブソン本家に準じるスペックとしてCTS製のポットが採用されるようになっています。
ラージガードに存在感があるSGスタンダードはスリムテーパーネックを採用
最初に取り上げるべきは、やはり王道のSGスタンダードでしょう。ボディ中央部の「ラージピックガード」に存在感がありますね。
旧製品では「Epiphone SG G-310」が同様のラージガードでしたが、この外観には「いかにもロックギターっぽい」という印象を抱く方が多いです。
コウモリの羽根に例えて「バットウィング」とも呼称されるよ。
「ヘリテージチェリー(赤色)、エボニー(黒色)、アルパインホワイト(白色)」の3色とも60sスリムテーパーという薄めのネック形状。
これは単にスリムなだけでなく、指板サイドの加工が滑らかで左手で握り込みやすいのが魅力でしょう。
ハムバッカーピックアップの種類は定番Alnico Classic PRO、ヘッド形状も従来よりGibsonのデザインに近づけるアップデートが施されました。
アーム付きSGスタンダード60s(61マエストロ・バイブローラ)はヘッド落ち対策にも有効
次は1961年にSGモデルがリリースされた当初のヴィンテージ・リイシュー(復刻)で、深みのあるチェリーカラーがモチーフの製品です。
SGスタンダードがボディトップの大部分を覆い込むラージガードだったのに対して、本製品は「スモールピックガード」デザインと呼ばれます。
2022年1月以降、「SG Standard 60s」という名称に切り替わったのですが、それ以前の流通分など「SG Standard 61」と表記揺れがあります。
エピフォン旧製品では「SG G-400」モデルがスモールガード仕様でしたね。
「マエストロ・ヴァイブローラ」のアームユニットは見た目の美しさだけでなく、ギターから左手を離した際にヘッド側が下がりやすいバランス(ヘッド落ち)の改善にも一役買っています。
下記「アームなし・ストップテイルピースの61年モデル」も、SG Standard 60s (61 Maestro Vibrola)とブリッジ以外のスペックは共通。
弦交換のしやすさ、チューニングの安定感では若干こちらの「ストップテイルピース仕様」に軍配があがるでしょうか。
ProBuckerピックアップは、Gibsonがヴィンテージ志向で開発設計したBurstbuckerをエピフォン流にアレンジしたものとなっています。
コイルを巻くボビンのサイズや形状にもこだわって、土台やカバーまで当時のニッケルシルバー合金を再現しているよ。
ギブソンカスタムショップと共同開発版のSGスタンダードも2021年12月に発売
上記モデルとの違いが少々紛らわしいのですが、後発でギブソンカスタムショップとエピフォンがコラボレーションしたSGモデルが登場しています。
製品名が1961 Les Paul SG Standardとなって「レスポール」がモデル名に含まれているところに着目しましょう。
「レスポールSG」と言われることもあるのですが、トラスロッドカバーにLesPaulのロゴが入っているのは実際にヴィンテージの初期SGに見られる仕様です。
あとはバックパネルからもエピフォンとギブソンのコラボレーション製品であることが分かるようになっています。
スモールガードでありながら、ピックガードの長さは既存のモデルより若干長くなっており、ペグもコブが多いダブルリング仕様でオールドに近づけてあるのが評判の良いところ。
カラーに関しても「Aged Sixties CherryとAged Classic White」でレギュラー版と区別されて、一層の風格を感じさせる佇まいとなっています。
本製品ではGibson BurstBuckerピックアップを採用しているうえに、付属品に関してもハードケースにアップグレードされたのがポイントです。
ダイヤモンドインレイが映えるSGカスタムはエボニー材の指板で製作されているモデル
それから今度はSGカスタムをチェックしてみましょう。もともと歴史的に前述した「SGスタンダード」の上位機種にあたります。
ゴールドハードウェア・四角いブロックポジションマークで、装飾面のアップグレードがされているため判別しやすいでしょう。
ヘッドの縁取りも複層のバインディングとなり、中心に「クラウンインレイ」ではなく「スプリットダイヤモンド・インレイ」をあしらった高級感ある仕上がりです。
現行機種は「無印のSGスタンダード」と同様にプラスチックボタンのキーストンチューナー、アルニコクラシックプロ・ピックアップを搭載。
エボニーカラーのフィニッシュに合わせて、稀少なエボニー材の指板が採用されているのもSG Custom特有で評価したいところですね。
モダンスタイルで選ぶエピフォンSGモデルの種類
ここからは、より現代的なアプローチで開発設計された「モダンSGコレクション」のご紹介です。
少々毛色が異なりますが、現時点のラインナップは「SGミューズ、SGモダン、SGプロフェシー」の3機種。
いずれもピックガードの付いていないスタイリッシュな外観のギターとなっています。
随所にヴィンテージスタイルと一線を画するスペックが盛り込まれているの種類ごとに特徴をみていきましょう。
メタリックカラーが斬新なSGミューズはハイ落ちに強い配線で柔軟な音作りに対応
まず、ラメ光沢がある個性的なメタリックフィニッシュが際立つSGミューズが下記です。
「グリーン、ホワイト、ブルー、パープル、ブラック、レッド、アーモンド」と7色に及ぶ豊富なカラーバリエーションが採用されました。
ライブのステージやSNSの動画でも、ばっちり映えるような色合いですね。
そして、SG Museでは見た目の斬新さだけでなく配線周りにも工夫が施されています。ボリュームを絞った際に高域が減衰すること(ハイ落ち)の対策として「トレブルブリード回路」を採用。
さらにスケルトンカラーのノブを引き上げる操作によって、シングルコイル風のエッジが効いたサウンドにするコイルスプリット機能、フェイズ(位相)切り替えまで対応しています。
カスタムCシェイプという、やや丸みを感じさせるネックグリップが珍しいね。ペグのつまみもキーストン型でおしゃれ。
モダンコレクションの代表格SGモダン・フィギュアドはエレガントな24フレット仕様
それから、下記のSGモダン・フィギュアド(フィガード)は、まさにエピフォン同コレクション代表格の製品。
マホガニーボディのトップ材に、AAA(トリプルエー)グレードのフレイムメイプルをラミネイトしたエレガントな装いが評判のモデルです。
前述の「SGミューズ」と同様にトレブルブリード回路、コイルスプリット、フェイズ切り替えに対応した配線で彩り豊かな音作りに貢献してくれます。
「トランスブラック・フィニッシュ」の色合いは派手過ぎないのがいいね。
さらにSGモダンフィギュアドで特筆すべきポイントは、フロントピックアップの際まで指板が伸びている「24フレット仕様」ということ。
他SGモデルと違い、一音分音域が広く、ネックジョイント部分まで滑らかなスリムテーパーネックで製作されているのがSG Modern Figuredの大きな特徴です。
さらに最先端を目指したSGプロフェシーは2021年から追加された製品
こちらもまた独特のインパクトがありますね。プロフェシーは「預言」という語意ですが、「モダンより先にもう一歩進んだ近未来的なスペック」を取り入れたSGの位置付けになります。
2020年からラインナップされるようになった現行モダンスタイルSGモデルの中で、やや遅れて2021年1月に追加で発表されました。
フレイムメイプルトップやオリジナルデザインのポジションマークをあしらったゴージャスな意匠で、非対称形状の24フレット仕様ネックというコンテンポラリー(現代的)なギターです。
SGプロフェシーで見逃せないのは、Fishman Fluence Epiphone Prophecyという専用ピックアップを採用していること。
公式デモ動画のシリーズ紹介をチェックしてもらうと、ピックアップカバーの独特なデザインが印象に残ります。
一見すっきりしたボリューム/トーンコントロールですが、プッシュプルによる3段階のボイシング機能を備えているのが新しい試みといえるでしょう。
写真だけでは少々分かりにくいですが、レッド・ブルー・ブラックのトランスカラーに軽めのエイジング(経年加工)を施したヴィンテージグロス仕上げ。
ロック式ペグなどの「金属パーツも艶消し」で統一感がある良い雰囲気です。
P-90ピックアップを搭載したエピフォンSGモデルの種類
最後にエピフォンのSGでP90ピックアップを搭載した2製品(プラス・アーティストモデル1製品)を取り上げます。
ピックアップ自体の特性としては、「ハムバッカーとシングルコイルの中間的な音色」と表現されることが多いでしょうか。
もともと「PAFハムバッカー」登場以前のギブソンを代表するピックアップで、一般的なシングルサイズのピックアップよりもコイルが平たく巻かれた形状になっています。
構造上マグネットの磁界が広く、SGギターと組み合わせたときのキレの良さと粘りを兼ね備えたサウンドが根強い人気です。さっそくラインナップを見ていきましょう。
ヴィンテージ志向に生まれ変わったSGスペシャルP-90は1960年代初頭のスペックを彷彿
本製品、SGスペシャルP90は「オリジナルSGコレクション」にラインナップされてるモデルです。
以前は「エピフォン版SGスペシャル」といえば、Epiphoneブランドのオリジナルデザイン製品を指していました。
その一方で、今作からは「Gibsonで1960年代に生産されていたヴィンテージのSGスペシャル」を復刻したような仕様になっています。
指板のポジションマークが丸ドットで「SGジュニア」と「SGスタンダード」の中間的なグレード。
カラバリがスパークリングバーガンディ、フェイデッドペルハムブルーというのも渋い…。
ブリッジパーツが「チューンオーマチックスタイル」になっている他機種と違い、SG Special P-90は「ストップバータイプ」です。
「ラップアラウンドブリッジ」とも呼ばれるシンプルな構造で、ギターから出力される音色もストレートな響きに感じることでしょう。
なお、同じEpiphone SG Specialでも2022年9月に発表されたトニー・アイオミのアーティストモデルは一味違ったテイストとなっています。
上述のSGスペシャルよりも後期。1964年製個体をモディファイ(改造)した仕様を再現することがコンセプトで、旧エピフォン・トニー・アイオミモデルとは全くの別モデル。
ピックアップカバーがクロームメッキだったり、ペグ、ブリッジパーツも変更されていることに気付くでしょう。レフティもラインナップされており、こちらの付属品はハードケースです。
フェイデッド風のSGクラシック・ウォーンP-90sはギブソン定番シリーズに由来するモデル
締めくくりのSGクラシック・ウォーンP90は「モダンSGコレクション」にラインナップされている製品です。
上述のSGスペシャルと対照的なラージピックガードデザインで、「チェリーとインバネスグリーン」の2色がありますね。
端的には2000年代に登場したGIBSON SG CLASSIC製品に由来するエピフォン版。
かつ、その「艶消し仕様」と考えてもらうのがいいかと思います。ウォーンフィニッシュは見た目だけでなく、手触りもサラサラした塗装ですね。
1960年代後半のSGスペシャルをモチーフに、ブリッジ部分を「LockToneチューンオーマチック・ストップテイルピース」にアレンジしたとも解釈できると思います。
まとめ
以上、ブルース、ハードロック、ヘヴィメタル、ポップスなど幅広いジャンルのギタリストに愛用されているSGモデル。
結構なボリュームになってしまいましたが、本記事で分類したように「トラディショナルスタイル、モダンスタイル、P-90搭載スタイル」などに一旦路線を絞り込んで候補を探していくと選びやすいと思います。
取り扱い店舗を探すときには、各楽器店ごとに実施されているお得なキャンペーンなどは、下記を参考にしてみてください。
最後までご覧いただきありがとうございました。