「サウンドホールがハート型になっているアコギを見たんだけど、あれはどこの製品なんだろう?」
そんな質問を受けたとき、まず確認してもらうのがZEMAITIS(ゼマイティス)のラインナップです。
ハート型サウンドホールのモデルとして、以前はCAF-80H、CAF-80HCW、CAM-80Hなどが定番でしたが、2026年現在はCAF-90HやCAM-90Hなどが主役になっています。
この記事では、ゼマイティスのアコギ全般ではなく、ハート型サウンドホールを採用したモデルに絞って、現行製品の特徴や選び方を元楽器店員視点で解説していきましょう。
ZEMAITISのアコースティックギターを選んでみる
ゼマイティス(ゼマティス)というと、華やかな彫金メタルプレートやパールインレイをあしらったエレキギターのイメージが先行するかもしれません。
しかし、そのルーツをたどると、創業者トニー・ゼマイティスは幼いころからアコースティックギターの修理・製作を独学して、家具職人として木工技術を培ったキャリアがあります。
エレキギターに定評があるのはもちろんですが、同社のアコギはブランドの原点にかなり近い存在といえるでしょう。

たとえば1969年に製作された12弦ギターの「Ivan the Terrible」が有名ですね。
独創的なハートモチーフのアートで、エリック・クラプトンの旧コレクションとしても知られています。
ゼマイティスがアコギにハート模様を取り入れるのは近年始まったばかりの試みではなく、ブランドの歴史に深く根差した正統派デザインです。

ジミヘンが弾いていた12弦ギターもじつはゼマイティスなんだよ。
以下では定番モデルのCAFシリーズとミニサイズ版CAMシリーズの解説から始めていきます。
その後、ワンサイズ大きめのCAG/CAJシリーズや国産ハイエンドのAAJ・AASシリーズについてもチェックしていきましょう。
CAF-90Hシリーズがハート型サウンドホール仕様を代表する主力モデル
2024年12月に発売されたCAF-90Hが最も代表的なモデルで、若干小ぶりなオーケストラサイズ仕様です。
型番の「H」がハート型サウンドホールを示しており、ロゼッタ(サウンドホール周囲のリング装飾)に11個のハートインレイがちりばめられています。
CAF-80H(2020年6月発売)の後継モデルとして、指板・ブリッジがインディアンローレル材からローズウッド材に変更。
高級感のあるヘッド突板、パーロイドのペグボタン採用など旧モデル以上にエレガントなデザインになりました。
そして、CAF-90HシリーズにはCAF-90HCWというバリエーションもあります。「CW」はカッタウェイシェイプを指しており、旧型番CAF-80HCWのアップデート版です。
CAF-90HとCAF-90HCWはいずれも全20フレット仕様。CAF-90HCWの場合、ジョイント部である14フレット付近の高音側がカーブしており、ハイポジションが演奏しやすい構造になっています。

ソロギターやリードを取る機会が多いプレーヤーにおすすめだよ。
両製品ともボディトップの単板スプルース材に「真空状態での加熱処理」を行うことで安定性・剛性が高められていることにも触れておきましょう。
そのトップ材は力木の交差部分を前方にシフトさせる「フォワードXブレーシング」によって表板が振動しやすく、豊かな生鳴りが得られるように設計されています。
また、シリーズ共通でブリッジサドルの底面部にピエゾピックアップが搭載された「エレアコ」になっているのも評判が良いです。
ライン出力する際には、ボディ側面(ショルダー部)のプリアンプによって「トレブル・ミドル・ベース・プレゼンス」の帯域別に音色調整が可能です。液晶画面でチューナー表示できるのも重宝しますね。
カラーオプションはボディの色だけでなく、ロゼッタのインレイもアバロン(青緑系)と、マザーオブパール(白系)の選択肢があるのでじっくり吟味してみてください。
カッタウェイ付きのCAF-90HCWでは、グロスブラック/グロスホワイトが島村楽器限定販売となっています。

紳士の口ひげを彷彿させる「マスターシュ・ブリッジ」も特徴的だね。
| CAF-90Hのカラーバリエーション | CAF-90HCWのカラーバリエーション |
| Denim Black Abalone Denim Black Mother of Pearl Forest Green Abalone Forest Green Mother of Pearl Gloss Black Abalone Gloss Black Mother of Pearl Gloss White Abalone Gloss White Mother of Pearl Natural Abalone Purple Abalone Purple Mother of Pearl White Abalone | Denim Black Abalone Denim Black Mother of Pearl Forest Green Abalone Forest Green Mother of Pearl Gloss Black Abalone【島村楽器限定】 Gloss Black Mother of Pearl【島村楽器限定】 Gloss White Abalone【島村楽器限定】 Gloss White Mother of Pearl【島村楽器限定】 Natural Abalone Purple Abalone Purple Mother of Pearl White Abalone |
上表のうち、デニムブラック、フォレストグリーン、パープル、ホワイトは「アンティークフィニッシュ」といって艶消し系の塗装なのでグロスブラックやグロスホワイトとは少し質感が変わります。
お手頃価格でありながら純正ギグバッグが付属しているのも嬉しいですね。
CAM-90シリーズはボディが小さいミニ・パーラー系のエレアコモデル
2026年4月に発売されたCAM-90Hは、2020年12月に発売されたCAM-80Hの流れをくむパーラーサイズのモデルです。
先に挙げたCAF-90Hシリーズも「オーケストラモデル」に分類される比較的小型のアコギなのですが、CAM-90H系はそれよりも小さなサイズとなっています。
フレット数はCAFシリーズと同じ20フレットあるのですが、下表の通り約3センチほど短いスケール(弦長)で全体的にダウンサイズされているのが分かります。
いわゆる「ミニギター」としては大きめの寸法なのでカテゴリー分類は少し悩ましいとことですね。
| 型番 | CAF-90H | CAM-90H |
| 弦長 | 630mm | 600mm |
| ボディ長 | 490mm | 436mm |
| ボディ幅(上部) | 282mm | 265mm |
| ボディ幅(下部) | 392mm | 355mm |
| ボディ厚(上部) | 96mm | 89mm |
| ボディ厚(下部) | 108mm | 104mm |
CAM-80H(2020年)とCAM-90H(2026年)の違いとしては、CAFシリーズと同様で、指板やブリッジがインディアンローレル材からローズウッド材に変更され、ヘッドの突板やペグボタンのデザインが切り変わっていることが挙げられます。
2026年4月にはCAM-90HCWとして、パーラーサイズ版にもカッタウェイ付き仕様がラインナップされるようになりました。
なお、旧モデルCAM-80H時代は純アコースティックギターでしたが、現行版はCAFシリーズを踏襲したエレアコ仕様になっているのも重要なところ。
小ぶりなサイズ感はそのまま、ライブや録音に気軽に使いやすくなりました。
| CAM-90H | CAM-90HCW |
| Gloss Black Abalone Gloss Green Mother of Pearl Gloss Pink Mother of Pearl Gloss White Abalone Gloss White Mother of Pearl | Gloss Black Abalone Gloss Green Mother of Pearl Gloss Pink Mother of Pearl Gloss White Abalone Gloss White Mother of Pearl |
上表の通り、CAM-90HとCAM-90HCWでカラー展開は共通。
サウンドホール・ロゼッタ部分のインレイはアバロン柄とマザーオブパール柄がラインナップされています。

カッタウェイの有無はデザインの好みを優先して選んでもいいね。
CAG/CAJ系はアコギの生鳴りを重視する方におすすめのバリエーション
続いて、「アコギらしい生鳴りを出しやすいボディサイズ」をお探しの方におすすめの製品です。
2022年2月に発売されたCAG-100HS-Eはグランドオーディトリアムサイズといって、CAFシリーズより一回り大きく、かつ標準的なドレッドノートより若干小さいくらいのサイズ感です。
2023年2月には、同じグランドオーディトリアム系の上位モデルとしてCAG-300HSも追加されました。マホガニー材のサイド&バック、エボニー指板・ブリッジなどを採用していますね。
また同グレードでいうと、2023年2月にはさらに大きいジャンボサイズのCAJ-300HSもリリースされました。
実際のサイズは下表のとおりで、型番に「E」と書いてあるのはCAG-100HS-Eだけですが、CAG-300HSやCAJ-300HSもL.R. Baggs Stagepro Elementを搭載したエレアコ仕様になっています。
| 型番 | CAF-90H | CAG-100HS-E CAG-300HS | CAJ-300HS |
| 弦長 | 630mm | 648mm | 648mm |
| ボディ長 | 490mm | 504mm | 528mm |
| ボディ幅(上部) | 282mm | 293mm | 322m |
| ボディ幅(下部) | 392mm | 402mm | 437mm |
| ボディ厚(上部) | 96mm | 95mm | 104mm |
| ボディ厚(下部) | 108mm | 120mm | 122mm |

ボディ幅だけでなく、ボトム側の厚みに結構差があるね。
「カッタウェイなし19フレット仕様のデザイン」というのがCAG/CAJシリーズ共通の特徴で、ハイポジションの演奏性より、アコギらしいバランスの鳴り感を重視したシリーズといえるでしょう。
CAJ-300HSには12弦仕様のCAJ-300HS-12もラインナップされています。
AAJシリーズは17インチ幅ジャンボサイズの日本製上位モデルが4種類ある
以上はお手頃な海外工場製でしたが、ここからはプロギタリストにも愛用されるクオリティの日本製モデルを見ていきましょう。
AAJシリーズが約17インチ幅のジャンボサイズで、もともと2021年2月に発表されたAAJ-1000HSD-EとAAJ-3000HW-Eの2機種が選べます。
AAJ-1000HSD-EとAAJ-3000HW-Eは、シトカスプルーストップのオール単板仕様。前者はマホガニーボディ、後者はローズウッドボディで製作されています。
音色面だと、マホガニーボディのAAJ-1000HSD-Eはふくよかで甘め、ローズウッドボディのAAJ-3000HW-Eは端正で上品なサウンドに聞こえるという方が多いでしょう。
ロゼッタやポジションマークのデザインも異なります。AAJ-1000HSD-Eはマザーオブパールのドット装飾、AAJ-3000HW-Eはハートとダイヤの木象嵌(もくぞうがん)によるウッドワークを採用しています。
その後、2022年10月にはオールマホガニー仕様のAAJ-1000HSD-E MAHOも追加されました。
既存のAAJ-1000HSD-Eがシトカスプルーストップ+マホガニーボディなのに対して、MAHOはトップ・サイド・バックすべてに単板マホガニーを採用したモデルです。
さらに2023年3月にはシトカスプルーストップにメイプル材のサイド・バックを組み合わせたAAJ-2500HPH-Eも登場しています。

サイドバック材を整理すると、1000番台はマホガニー、2500番台はメイプル、3000番台はローズウッドだね。
いずれもFishman Matrix Infinity VTピックアップ&プリアンプ搭載のエレアコ仕様ですが、ボディ本体への加工が最小限で済むように、コントロールはサウンドホール側に配置されているのも特徴です。
AASシリーズは15インチ幅スモールサイズの日本製上位モデルが3種類ある
日本製のスモールサイズは約15インチ幅のAAS系として展開されており、フラッグシップモデルは2021年2月に登場したAAS-3000HW-Eです。
AAJシリーズと同様、ヘッドやネックまわりにフレイムメイプル材のバインディングがあしらわれた気品を感じる仕上がりですね。
AAS-3000HW-Eは、イングルマン・スプルーストップ、ローズウッドサイド&バックのオール単板仕様。ハート型サウンドホールの周囲には、ハートとダイヤの木象嵌(もくぞうがん)が採用されています。
弦長はAAJシリーズと共通で25 1/2インチ(約648ミリ)、伝統的なダヴテイル方式のアフリカンマホガニー材ネックで、スモールサイズらしいタイトなピッキングレスポンスが魅力です。
なお、もう少しお手頃なバリエーションとしては、2021年6月にAAS-1500HPD-E、2021年夏にはAAS-1000HPD-Eがリリースされています。
AAS-1500HPD-EとAAS-1000HPD-Eは、シトカスプルーストップのオール単板仕様で、前者がエボニー指板・ローズウッドボディ、後者がローズウッド指板・マホガニーボディというグレード分けです。

演奏性を向上させる目的でボディ厚が約5mm薄くなりました。
ボディバインディングはべっこう柄で、それぞれにナチュラルとブラックのカラーが用意されています。
まとめ
以上、ゼマイティスのアコースティックギターの中でもハート型サウンドホール仕様のモデルに絞って、2026年現在の選び方を解説してみました。
売れ筋の人気モデルやギター初心者向けのアコギとして探すならCAF系やCAM系を中心に見るのが分かりやすいです。
生鳴りのアコギらしさを重視するならCAG/CAJ系、予算が許すなら一層クオリティにこだわったAAJ系・AAS系も候補になります。
ゼマイティスはサウンドホールの形状や装飾だけでなく、ほのかにアンニュイなボディシェイプも美しいですね。
最後までご覧いただきありがとうございました。















