「ギター初心者なら、ネットで買うより実店舗で選んだ方がいい」というアドバイスをよく見かけますよね。
必ずしも初心者に限ったテーマでもないですが、実店舗(リアルショップ)に行くのが無難なのか、それとも最近はインターネット通販で買うのも安心なのか。
私の場合、楽器店に勤める以前の学生時代、アコギの初心者セットを買ったときにはインターネット通販を使ったことを思い出します。
1990年代だったので、一部の楽器店しかネット通販に参入していなかった頃ですが、今となってはネットで購入できない楽器店のほうが珍しくなりましたね。
本記事では楽器店員の率直な経験談として、それぞれの購入方法のメリットとデメリットを整理してみました。
エレキギター通販とアコースティックギター通販で共通の内容ですので、参考にしていただければと思います。
実店舗でギターを買うメリットとデメリット
まず、「ギターを買うなら実店舗での購入が本当におすすめ?」という観点から掘り下げていきましょう。
楽器店に足を運ぶことの長所と短所について考えてみよう。
それらのおすすめ理由に続いて、デメリットを挙げると、
「そんなの当たり前じゃん」と思う人もいるかもしれませんが、ビギナーの方にはニュアンスが伝わりにくい部分があるのではないでしょうか。
楽器以外に限らない内容も含まれますが、以下に具体例を整理して解説していきたいと思います。
お店に行けばたくさんの楽器が見比べられる
これは言わずもがなでしょう。楽器店には発売されたばかりの新製品から、長年ラインナップされ続けているロングセラー製品までたくさんの楽器が展示されています。
店舗の規模・コンセプトによって異なりますが、都心部には常時数千本のギターを展示をしているショップもあります。
それはすなわち、一人で下調べしていた段階では知るすべのなかった製品に出会うきっかけになるかもしれません。
お店の立地・方針によっては「初心者向けモデルを置いていないこと」もあるので注意しよう。
店舗なら楽器の色味やサイズが把握しやすい
楽器本体のカラーやサイズ、写真では伝わりにくい質感の違いなど、実物を間近で見るに越したことがないですね。
販売店のWEB掲載画像ではかっこよく見えたギターがいまいちに感じたり、その逆に全然違った好印象を受けるギターもあると思います。
実際に店頭で自分が抱えたときにどんな具合に映るか、普段の服装に色味は似合っているか。
店舗によってはスタンドミラー(姿見)を用意してくれているところもあるので、複数本を比較することで似合う・似合わないの気付きがあるでしょう。
実物に触れたり試奏ができるのは大きな強み
エレキギターもアコースティックギターも、購入前の楽器を試奏するためには店舗に行かないといけないですよね。
試奏は「しそう」と読みます。たまに試演(しえん)、試弾き(しびき)という人もいますが、試奏(しそう)と呼ぶのが一般的。
最初はあまり違いが分からないと思いますが、購入検討中の楽器がどんな弾き心地なのか、どんな音がするモデルなのかをお試し体験させてもらえます。
全然弾けなくても、その雰囲気、重量や重心の感覚を比べるだけで意味があるよ。
「どのモデルでも試奏できるとは限らない」ですが、購入を確定する前に「これは試奏できますか?」と店員さんに尋ねてみましょう。
分からないことをその場で気軽に質問できる
はじめての楽器選びであれば、大小さまざまな疑問が沸いてくるはずです。
担当してくれる店員によって知識量はまちまちですが、それでも売れ筋商品の情報、お手入れの方法、練習方法など疑問点が出たときに、その場でプロのアドバイスをもえらえるのはありがたいところ。
ネットで調べたり、詳しい人に尋ねるなどの手間をかけずに分からないことはその場で解決できます。
そして「お取り寄せ商品」でなければ、盛り上がったテンションのまま、その日のうちに持ち帰って練習できるのもメリットです。
交通費の他に時間も想像以上にかかる
ここからは実店舗でギターを選ぶデメリットですね。交通費や時間の問題は想像しやすいと思います。
そもそもお住まいの地域によっては、近場に大きなギターショップがないという方も多いでしょう。
「わざわざ遠方から来たからには何か決めないと」という気持ちになり、不本意に選んでしまうのは避けたいよね。
店舗に到着して候補を選んだり、比較検討を行う時間の他、混雑具合によっては接客自体の順番待ちで時間がかかることがあります。
あとはケースバイケースですが、お会計後にギターの調整や付属品の準備などの待ち時間が発生することも含めて暇なタイミングができるのは珍しくないのでご注意ください。
店員との会話が苦手、強引な接客がつらい
楽器店に不慣れな人ほど、店員さんとコミュニケーションを取ること自体に苦手意識を持つ方は少なくないはず。
アパレルショップや家電量販店ので受ける接客に通じる部分があって、ギターを下見していると、だいたいの店員はすぐさま声を掛けてきます。
ときには「周りを見渡しても店員が捕まえられない・奥から出てこない」というお店もありますが、初心者コーナーだと話しかけられる頻度が高いのは間違いないです。
たいていの販売員には「売上目標やノルマに準じるもの」があります。あからさまに強引な接客をされる事例は減りましたが、本当はもっとゆっくり悩ませてくれたらいいのに…という場合も。
実物を見ても結局違いが分からないことも
それから、せっかく店頭に行ったのに全然モデルを決められないパターンについて触れておきましょう。
もともと優柔不断な人は要注意で、予算を設定する範囲によりますが、入門用のギターはとにかく豊富なバリエーションがあります。
接客を受けていても「どれも同じに見えて迷う、違いが分からなくて判断できない」→「とりあえず出直します」と即決できないのは誰しも通る道でしょう。
「一本目は通販にしておいて、選定眼が付いてきたら実店舗」というステップを踏むのもありだよね。
普通は他人が触った展示品を買うことになる
あとはデメリットというより、これは予備知識として知っておいてください。
ギターを売っている実店舗では基本的に展示品(現品)を販売します。店頭のハンガーやスタンドに陳列されている個体です。
家電などの買い物をするときは「これ買います、在庫ありますか?」といった流れですよね。ギター本体の場合はあくまで展示品。
どのくらいの期間、売場展示されていて、何人に試奏されたか分からないのは苦手という声も聞きますね。
モデルによってはバックヤードに未開封の在庫がある場合もありますので、一応担当スタッフに尋ねてみるのもいいかもしれません。
あらためて、試奏の際の展示品は丁寧に扱うようにしましょう。
ネット通販でギターを買うメリットとデメリット
今度は「ギターを買うならネット通販、ネットショップがおすすめ?」というほうに視点を移していきます。
年々シェアを増しているインターネット通販を利用した場合の長所と短所を具体的に見ていきましょう。
最近はギターのレンタルやサブスクという選択肢もありますが、別記事で解説しているのでここではネット通販に焦点を絞って解説していきたいと思います。
実店舗に置いていないモデルも探しやすい
何より、ネット通販は全国各地の楽器店から購入できるのが大きな強みです。特に地方都市だと通える楽器店の数は限られてきます。
都心部では売り切れているような「リミテッドカラー・数量限定モデル」をはじめ、近隣の店舗で見つけられない場合も日本中を探せばどこかには残っているかもしれません。
実店舗に関しては、展示スペースの都合などで仕入れを絞らないといけないことがあるよ。
試奏されていない楽器が手に入りやすい
「せっかく新品のギターを購入するなら店頭展示品は避けたい」と思う方も少なくないでしょう。
そこで、通販専門在庫があるショップを選ぶという手段が考えられます。
ただし、ネット通販でも店頭品を併売しているショップが多いことは知っておいてください。
もし未展示品にこだわりたいのであれば、注文前に「未展示在庫を希望するけど可能かどうか」問い合わせてみましょう。
※出荷前検品などのために、ダンボールを開封することはあります。
製品仕様や口コミをマイペースで調べやすい
自分が購入しようとしているモデルの詳細スペックや、レビュー・評判はどうしても気になりますよね。
楽器店やネット通販モールのWEBサイトは短時間で商品選びができるように各店が特集ページなどの工夫に取り組んでいます。
そこには店頭のプライスカードに書いていない仕様の詳細・解説が掲載されていたり、音色の参考にデモ演奏動画を公開しているショップもあって横断的に比較するのにおすすめです。
定番モデルなら第三者の口コミ・レビューも判断材料の参考にしやすいね。
複数ショップを比較してまわっても疲れない
ネット通販でも色々なサイトを見て周るのは疲れるものですが、リアルの買い物でのそれとは違いますよね。
ひとくくりに「楽器店」といっても、その店舗ごとに得意とする取り扱いメーカー/モデルは異なっています。ショップを何軒もハシゴするとさすがにヘトヘトになりますよね。
実店舗利用だと、購入後も普段持ち慣れていないギターケースを混雑した電車で持って帰らないといけないのは意外としんどいものです。
そこそこ重さもあるので、両手が塞がって周りにぶつけたりしないよう帰宅するまで神経を使うことになります。
ギターの実物と写真の見た目違う場合がある
続いて、ここからはネット通販の短所の部分ですね。しばしば「サイズや色、重さなどがイメージと違う状況」はしばしば起こりえること。
インターネット通販の製品画像は、どちらかといえばサンプル写真が主流ですが、木目や色味は一本ごとに個体差があるものです。
特にブルー系、グリーン系などの色味は撮影環境・モニター環境によって雰囲気が変わりやすいね。
価格帯によっては実物画像の場合もあり、ショップや商品ごとに規定は異なりますが、「イメージと違ったから」という理由での返品は断られることが多いです。
信用できるお店を調べるのに一苦労する
楽器通販のショップ選びは慎重になりすぎるくらいがちょうどいいでしょう。
通信販売だとスタッフや現場が見えない分、信頼できるお店かどうかは念入りに確認したいところ。
モールに出店しているショップでも会社概要など今一度チェックしておきましょう。大手楽器店の公式通販サイトに似せた怪しいページもあります。
実際、楽器店に勤めていると(詐欺サイト・転売サイトで)「注文したのにギターが届かない」というお問い合わせは絶えないです。
カートに相乗りしたプレミアム価格の転売品にも気を付けて比較する必要があります。
運送トラブルが発生することはある
できれば考えたくないことですが、しっかり運送トラブルについても触れておきましょう。
ギターの強度はモデルによって異なりますが、基本的にデリケートなつくりです。
各社とも緩衝材や梱包の方法などに留意していますが、どうしても一定確率で運送事故は起きています。
自分に過失がなければ補償してもらえるはずですが、ショップ側との面倒なやり取りは骨が折れるし、交換や返金に相応の時間がかかること、心の準備だけはしておきましょう。
まさか自分の荷物が…と思うけど、配送トラブルの可能性は織り込んでおいたほうがいいね。
コンディションに不安を抱きやすい
最後にコンディションについて。気温や湿度など保管環境によってギターのコンディションは常に変化するものです。それは配送中・運搬中にも発生します。
ネットショップで全数検品を謳っているところは増えましたが、配送直前に倉庫保管品の検品調整を行うかどうかはショップによりけり。
どちらかといえば、実店舗で楽器を受け取る直前のタイミングに店員さんがチェックしてくれたほうが安心感はあるでしょう
実店舗vsネット通販で一概には言えないところ
以下では「実店舗vs通販」というところで、しばしば勘違いされやすいところについて補足しておきましょう。
こういうアドバイスがあったけど、本当はどうなの?というお話にも触れておきます。
まことしやかに語られているけど、どのくらい信憑性はあるのかな。
実店舗よりインターネットで買う方が安い?
「ギターは実店舗で買うより、ネット通販で買うほうが絶対安い!」なぜなら店舗を運営するためにはテナント家賃や人件費など固定費ががかかっているから。
たしかにインターネットでは競合比較がしやすいため価格競争が激しくなる傾向はあります。
その一方で、ネット販売には実際の店舗とは異なった諸々のコストがかかっています。
配送センターなどの物流施設であったり、ECサイトの構築・保守費用、受注管理のシステム運用、カスタマーサポート窓口の運営、WEB広告費。ショッピングモール系の手数料負担や送料もあります。
そういった背景から、あえて店頭販売限定の特価品・掘り出し物として売り出しているギターも存在します。モデルや時期によるのでケースバイケースだと考えておきましょう。
ネットショップは不良品で失敗しやすい?
ネット通販は不良品にあたることが多いってみんな言っている。初心者は絶対に実店舗で買った方がいい!
こちらも言葉足らずなところがありますよね。
あいにく実店舗でも不良品に引き当たってしまうことはあります。
口コミ・レビューが悪いとネット通販の死活問題。売れ行きが厳しくなるので検品体制の見直しを進めているショップは増えていると感じます。
しかし、そもそも人がチェックしている以上、どうしても初期不良の見落としは起こりえます。
自宅に届いて間もなくコンディションが変化することも珍しくないです。
少しでもリスクを減らすための対策として、「通常より時間をかけた念入りな検品調整を依頼」すれば配慮してくれることはあるよ。
いずれにせよ何か不具合が生じたときに備えてアフターケア・保証、返品規定のチェックなどは忘れないようにしておくのがベターでしょうか。
まとめ
以上、なるべくフラットに比較してみたつもりです。
実際、ネット通販は近年ますます利便性が高くなっていますし、実店舗のほうもカジュアルで入りやすいお店が増えた印象を受けています。
それぞれの利点・欠点を知ったうえで「お店に行くか、ネットショップを利用するか」自分自身にとってどちらが向いているか判断してみましょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。