当サイトではエレキギター初心者向けの楽器選びについて、楽器店員視点でメーカー/モデル別の記事を投稿していますがYAMAHAのPACIFICAシリーズは早めに紹介したいと思っていました。
あえて「ヤマハ・パシフィカをおすすめしない理由、選んではいけない理由」なども考えてみたものの、強いてネガティブなところを挙げられないくらいベーシックきわまりないモデルです。

昨年2022年12月には「ぼっち・ざ・ろっく」で後藤ひとりちゃんが弾いている2本目のギターとして一際再注目されることになりましたね。
でも、いざ比較検討するのにはちょっと機種が多すぎて悩んでしまいませんか?
本記事では「全機種のカタログを見比べるのはしんどい」という方に向けて、元楽器店員のおすすめモデルを4製品に厳選。ギターの種類ごとの特徴・違いについて解説してみました。
(もともと新生活シーズンには品薄になりやすいモデルで、最近は欠品が続くにつれ価格が高騰している場合があるので複数ショップで検索するようにしてみてください。)
ヤマハ・エレキギターの選び方:パシフィカのバリエーションから厳選した4モデル
ヤマハのパシフィカ製品はPAC100シリーズ、PAC200シリーズ、PAC300シリーズ、PAC600シリーズと数字が大きくなるほど本体価格/グレードが上がります。
あらためて数えてみたら現行は合計13機種。色違いを含めると、なんと40種類近くに及ぶ選択肢があるんです。

それに加えて島村楽器オンラインストア限定で販売されているPacifica012シリーズもあるよ。

ユーザー個別の嗜好に歩み寄った多彩な製品展開といえますが今回はその中で決め打ち。楽器屋店員視点で選抜したPACIFICA四天王をご紹介しています。
以下でチェックしていくパシフィカシリーズは、値引きが行われる前のメーカー希望小売価格で税込34,100円から税込74,800円という範囲(2023年3月現在)
ピックアップしている下記モデルの中で気になる製品を見つけたら、その色違いや仕様のバリエーションを深堀りしていく選び方がおすすめです。
ギター初心者や学生さんにヤマハPACIFICA 112Vがコスパ抜群
まず、一番お手頃なモデルからですが、本製品はかなり歴史が長いエレキギターで1995年に「PAC112」としてデビューしました。
それから、2007年10月にハードウェア・設計面でのアップデートが行われて、現行製品はPAC112Vという型番になっています。名称の末尾に「V」が付いたわけですね。
音を拾うピックアップ(マイク)の構成は「SSHレイアウト」もしくは「リアハム」と呼ぶのですが、「S」はシングルコイルで、「H」はハムバッカーの略称。
通常「SSS=スリーシングル」のストラトキャスタータイプでは音が細くなってしまうブリッジポジションの出力をパワフルにする工夫となっています。

当製品にはポップなカラーリングが多いんだけど、飽きのこない定番「イエローナチュラルサテン」を選んでみました。
これだけ安い価格帯に関わらずサウンドバリエーションを増やすためのコイルタップ機能が付いているのは大きな特徴。
「メイプル指板のPAC112VM(下画像)」や「2ハムバッカー仕様のPAC120H」もあるのですが、定番モデルならPAC112Vが代表格といえるでしょう。
入門機種に思えない高級感を漂わせるヤマハPACIFICA 212VFM
続いて、PAC212VFMは前述したPAC112Vの見た目がゴージャスになったモデルで2010年4月に発売されました。こちらもずいぶん長寿製品ですね。
ギター本体のボディトップとヘッドに「薄いメイプル材の化粧板」が貼ってあるのが見て取れるでしょうか。
スペック面では先に挙げたPAC100番台と大きな違いがないので、ここではパシフィカ特有のユニークな色合いとして「キャラメルブラウン」を取り上げました。
わずかにオレンジ味を帯びたオリジナルカラーで、赤にも茶にも映るような美しい仕上がりが魅力でしょう。
型番末尾の二文字、「FM」は杢目(もくめ)の種類を表しており、「QM」が付くバリエーションもあります。
両方とも雰囲気は似ていますが、前者が「フレイムメイプル」というストライプ状の杢目で、後者が「キルトメイプル」というウロコ状の杢目。
「ナット幅41mm」というのが(アーティストモデルを除き)パシフィカ共通の寸法として、エレキギターの中でもやや細い部類のネック幅で製作されています。

PAC300番台のPAC311Hは遊び心のあるピックアップ構成だけど今回は割愛。
上位モデルながら割高に感じさせないヤマハPACIFICA 612VIIFM
さらにもう少し予算の工面ができる場合、現行パシフィカの上位グレード。PAC600番台に属するPAC612VIIが候補に挙げられます。
ちなみにシリーズ上位機種とは言え、ギター初心者が十分狙える価格帯。かつ「二本目以降のギターとして選ぶモデルにもおすすめ」のクオリティで評判です。
ヤマハのパシフィカ旧型番で「PACIFICA 612V」が前身にあり、現在生産されているモデルはその第二世代(2018年7月発売)なのでIIと入っています。
機種依存文字なので「I」で書きますが、VII(セヴン)ではなくVII(ヴイツー)ということですね。

青とも緑とも言えない絶妙なインディゴブルーの色合い、フレイムメイプルの杢目によって濃淡が生まれているのが素敵。
近い型番では下記のように「PAC611VFM(トレモロ仕様)」と「PAC611HFM(ハードテイル仕様)」があります。
612と違い「P90とハムバッカーを組み合わせたピックアップ(マイク)構成」なので、あえて候補を絞るならPAC612VIIがSSH構成で王道路線。
PACIFICA612VIIモデルに関しては、先にご紹介したPAC100番台・PAC200番台と異なる「セイモアダンカン・ピックアップ、ウィルキンソン・ブリッジ、グローバー・ロッキングチューナー」を搭載しています。
こういったパーツ名が専門用語で難しく思うかもしれませんが、ハイエンドモデルにも使われるようなグレードの部品を採用していると理解してもらえば大丈夫です。
2021年からの新作として発表されたヤマハPACIFICA 612VIIXに注目
そして2021年1月にリリースされた製品PAC612VIIXをご紹介しておきましょう。読み方は「ヴイツーエックス」となります。
末尾に「X」が付いているのは、「PAC612VII」に一層モダンなルックスを採用したイレギュラースペックという位置付けです。
型番に「FM」が入るフレイムメイプルトップ仕様「PACIFICA612VIIFMX」も出ているのですが、上記は木目がシンプルなアルダーボディ。
下記のように第一印象は結構変わりますが、いずれもメーカー希望小売価格自体は一緒なのでデザインの好みで選んでみてください。
PAC612VIIXの「ティールグリーンメタリック」には光沢があって「マットシルクブルー、イエローナチュラルサテン」は艶消し仕上げ。
パシフィカシリーズのなかで一番新しい製品ということもあり、ヤマハ公式Youtubeチャンネルに丁寧な解説がアップロードされているので参考にしてみてください。
カラーによってピックガードの種類が違い、ネック裏の塗装もボディフィニッシュに応じてグロスとサテンが使い分けられている特徴があります。
「ぼっち・ざ・ろっく!」で後藤ひとりちゃんが弾いているパシフィカについて
冒頭でも少し触れましたが、ヤマハのパシフィカでは「ぼっち・ざ・ろっく」で後藤ひとりちゃん、ぼっちちゃんがアニメ第12話(1期最終話)で購入した2本目のギターについてご質問をいただく機会があったので解説しておきます。
結論からいってしまうと、結束バンド・後藤ひとりちゃん(声優・青山吉能さん)のギターは、現行レギュラーラインナップの仕様であればPACIFICA611VFMが最も近いです。
こちらは2015年6月から発売されているモデルにあたり、パシフィカモデルの上位機種600番台のなかでPACIFICA612VIIFM(2018年7月)、PACIFICA612VIIX(2021年1月発売)より先行してラインナップされている製品。
値引き前のメーカー希望小売価格が税込70,400 円で、パシフィカ612と違い「音を拾うピックアップ(マイク)の構成がP90(ネック側)とハムバッカー(ボディエンド側)の組み合わせ」になっているのが最大の特徴です。
型番PACIFICA611HFMと似ているのですが、「H」が入っている方はブリッジパーツの種類(アームが付いているか付いていないか)で異なるのでご注意ください。
なお、ぼっちざろっくで使用されているギターは作中で「特注仕様」と説明されています。
厳密に見ていくと、ピックガードが(べっこう柄ではなく)ブラック/ホワイトのマルチプライになっている、ピックアップカバーの色が違っている、エスカッション(ピックアップ周囲の枠)が金属になっている違いに気付くでしょう。
細部まで再現しようとするとカスタマイズ・パーツ交換が必要ですが「新品の状態でもっとも近いのはYAMAHA PACIFICA611VFM」と考えていただければと思います。
2022年12月24日から2023年1月9日にかけては、ぼざろ・後藤ひとりちゃん仕様のカスタムモデル(PACIFICA611VFMをもとにした非売品仕様)が2名にあたるキャンペーンが開催されていました。
現在も公式に特設サイトがオープンしているので合わせてご覧になってみてください。
なお、お父さんから借りていた一本目のレスポールカスタム(下画像)については、ギブソン製だとかなり高価。お手頃なエピフォン版に関しては、メーカー長期欠品が続いています。
まとめ:ギター初心者はヤマハのエレキが無難で扱いやすい
以下、まとめです。パシフィカについてのマメ知識として補足すると、PAC型番の数字は一桁目がグレード、二桁目がハムバッカーピックアップの数、三桁目がシングルコイルピックアップの数を表したものになっています。
もともとパシフィカといえば、1990年代に登場して間もない頃はスタジオミュージシャンがプロの現場で使うイメージが強かった製品。

そのノウハウを活かしつつも、近年再ブランディングされて、エントリークラス~中級者向けの人気ラインナップとして広く評価されるようになりました。
ヤマハの場合、このような価格帯でもOEM(他社工場での委託生産)ではなく、海外の自社工場で品質管理・コスト削減を行っているのが強み。
直近ではバイクのデザインにインスピレーションを受けたREVSTAR(レブスター)シリーズのリニューアルも話題ですが、パシフィカの場合は特別に尖った個性がないぶん癖が少なくて扱いやすいです。
常々ギター初心者に寄り添ったアップデートを重ねてきた経緯があり、汎用性の高いストラトキャスタータイプとしての評価を確立しており、入門機種選びに失敗したくない方向けにイチオシといっていいでしょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。