自宅練習用のギターアンプが欲しいけど、「あまり大きな音量は出せない」「一人暮らしでアンプを置くスペースが取れない」なんてときにぴったりの機材がヘッドホンアンプ。
「ヘッドホン端子を備えたギターアンプ」とは少し意味合いが異なり、「ギターアンプは使わずにヘッドホンをつなぐための製品」を指します。

通常のエレキギターの場合、ジャックにヘッドホンのプラグを挿すだけでは音が聞こえません。
ギターのピックアップが拾う信号は微弱なため、「ヘッドホンアンプ」をつなげることで出力がAmplifier(増幅・拡大)されて「ヘッドホンやイヤホンが接続可能」なレベルになります。

「ギターアンプを使わない練習方法」としては、パソコンにオーディオインターフェイスを接続したり、DAW・アンプシミュレーターを活用する手段もありますが、ヘッドホンアンプはとにかく手軽に導入できるのがメリットです。
ランキング形式で比較候補を増やしすぎても迷いやすくなるので、今回は元楽器店員視点で「はじめてでも扱いやすいか」「安心して選びやすい定番モデルか」を重視して厳選しました。

端子が合えばイヤホンも挿せるから「イヤホンアンプ」と呼ぶこともあるよ。
VOXアンプラグは約20年続いているヘッドホンアンプの代名詞的存在
まずはヘッドホンアンプの代表格、VOXのamPlug(アンプラグ)シリーズからチェックしていきましょう。
VOXは1960年代のリバプールサウンドやUKロックのDNAを現代に伝えるアンプブランドの王道ですね。
シールドケーブルが不要で、エレキギターのジャックに直接接続できる方式のヘッドホンアンプを定着させたのがアンプラグです。
初代のamPlugが2007年に登場。第2世代のamPlug2は2014年、第3世代のamPlug3は2024年に発売されました。
ギターの種類によってアウトプットジャックの位置や角度は異なりますが、第2世代以降はプラグが回転収納式になりほとんどのエレキに対応しています。

第2世代の時点でエフェクト機能(コーラス・ディレイ・リバーブ)があり、第3世代ではそのエフェクト効果がステレオサウンドにアップデートされました。
アナログ回路を維持したまま真空管アンプのコンプレッション感や倍音成分まで再現しているのがVOXのこだわりで、最新版では筐体の形状も両端に丸みを帯びたデザインに変更されていますね。
モデルになったギターアンプの違いにより「AC30、UK Drive、US Silver、Boutique、High Gain」というラインナップがあり、ギタリスト宍倉 聖悟氏によるデモ動画で音色の特徴が聴き比べられるので参考にしてみてください。
いずれの機種も2チャンネル仕様でキャラクターを変更できるのと、さらに9種類のメトロノーム・リズムパターンを鳴らすことができます。

アンプラグはとにかくシンプルに操作できるのが特徴で、筐体側面にある電源スイッチを入れたら、あとは上面にあるホイールノブでゲイン、トーン、ボリューム、エフェクトを操作するだけの設計です。
リズム/エフェクトオフの状態であれば「アルカリ単4乾電池2本で約16~17時間駆動」と燃費の良さも嬉しいところです。

AUXイン端子でスマホや外部音源を流すこともできるよ。
幅8.7cm、奥行3.3cm、高さ3.9cm、重量約40g(電池含まず)
ボスKATANA:GOは小型マルチエフェクターのように直感的な操作性
続いては、日本を代表する電子楽器メーカーRolandが展開するエフェクターブランド、BOSSのKATANA:GOです。
世界中のギタリストの足元を支えてきたBOSSが手がけるヘッドホンアンプということで、かなり評判が良い製品です。
2024年3月に発売されたKATANA:GOですが、発売後まもなく部材調達の難航により受注停止となり販売終了。2025年2月より新デザインで販売再開された経緯があります。
旧デザインはボリュームノブが本体のフロント面に付いていたのですが、現行版では刀ロゴと有機ELディスプレイがメインのすっきりしたデザインになっていますね。

新旧モデルの違いは見た目だけでサウンドや機能の変更は行われていないよ。
BOSS KATANAシリーズは、同社WAZA AMP開発のノウハウをもとに2016年10月に発売されたロックギター向けのアンプシリーズです。
WAZA AMPのラインナップでは、2019年4月から販売されているWAZA-AIRについても触れておきましょう。
WAZA-AIRは、ヘッドホンそのものにアンプ機能を内蔵したような製品で、ギター側にトランスミッターを付けてワイヤレスで演奏できるコンセプトでした。
そういったKATANA/WAZA系の技術を、よりお手頃な価格帯のヘッドホンアンプとして取り入れた製品がKATANA:GOだと考えると分かりやすいでしょう。
本製品では10種類のギターアンプと3種類のベースアンプ、60種類以上のエフェクトやチューナー機能が搭載されています。
STAGE FEEL機能という立体音響テクノロジーでスタジオやステージでアンプを鳴らしているような音場を再現。一昔前のヘッドホンアンプにありがちな平べったいサウンドとは別格のクオリティに仕上がっていました。
実際の使い方としては、筐体の両サイドに物理スイッチやノブが付いており、「+/-ボタン」でモードを変更したり、「A/B/Cボタン」でバンクの切り替えができます。フロントの液晶ディスプレイに設定状況が表示されるので分かりやすいですね。
前述のVOX amPlugほどシンプルではないですが、「ギター初心者でも使いやすいマルチエフェクター」くらいの操作感を予想しておけば大丈夫。そのまま即戦力で使えるプリセットも30パターンが用意されています。
USB充電式のリチウムイオン電池で約5時間の連続駆動が可能。Bluetooth接続により、ワイヤレスでのオーディオ再生ができたり、オーディオインターフェース機能としてパソコンやスマホにつなぐ用途にも対応しました。
幅4.5cm、奥行12.5cm、高さ2.9cm、重量約65g
フェンダー・ムスタングマイクロは25種類のアンプサウンドが選べる
世界的なギターブランドとして有名なFenderですが、アンプの修理・製造からスタートした会社だということは意外に知らない方もいるかもしれません。
フェンダーのヘッドホンアンプは、2021年4月に初代Mustang Microが発売され、その後2024年9月に第2世代となるMustang Micro Plusが登場しました。
「ムスタング」「マスタング」はギターのモデル名としておなじみですが、2010年にMustang I / IIがリリースされて以降、Mustang MiniやMustang Floorなど、デジタルアンプ・モデリング系機材の名称にも採用されています。
正面にダイヤルノブ、側面に操作ボタンを配置する基本設計は初代Mustang Microを踏襲。Mustang Micro Plusからは液晶ディスプレイが追加されています。

ディスプレイが付いたことで簡易的なチューナー機能も搭載されたよ。
公式のスマホアプリ(Fender Tone)もありますが、筐体側面に配置されたPRESETボタン/EQボタン/MODIFYボタンを「+-ボタン」で操作するだけで普段使いは問題ありません。
アンプモデルのオプションは初代では12種類でしたが、現行のMustang Micro Plusでは25種類に増えています。
下表のようにクリーンサウンドからハイゲインアンプまで幅広いタイプが用意されており、25種類のエフェクトモデルも充実した内容です。
| ギターアンプモデル | ベースアンプモデル | エフェクトモデル |
| ’57 CHAMP ’57 DELUXE ’57 TWIN ’59 BASSMAN ’65 PRINCETON ’65 DELUXE ’65 TWIN ’60S BRITISH BRITISH WATTS ’70S BRITISH ’80S BRITISH ’90S AMERICAN BRITISH COLOUR BB15 LOW GAIN BB15 MID GAIN BB15 HIGH GAIN SUPER-SONIC FBE-100 METAL 2000 UBER ’60S THRIFT EXCELSIOR STUDIO PREAMP TUBE PREAMP ACOUSTIC SIM | SUPER BASSMAN RUMBLE V3 2X10 RUMBLE V2 1X15 BASSMAN TV SHOWMAN 2X15 ROCKIN’ PEG ’66 FLIP TOP REDHEAD KGB 800 MONSTER | OVERDRIVE GREENBOX MYTHIC DRIVE BLACKBOX FUZZ BIG FUZZ OCTOBOT COMPRESSOR SUSTAIN 5-BAND EQ ENVELOPE FILTER SINE CHORUS TRIANGLE FLANGER PHASER VIBRATONE SINE TREMOLO HARMONIC TREMOLO MONO DELAY TAPE DELAY 2290 DELAY REVERSE DELAY LARGE HALL SMALL ROOM SPRING REVERB MOD. LARGE HALL |
やはり1950年代~1960年代のフェンダーサウンドを象徴する名作アンプが収録されているのが嬉しいですね。
サウンドプリセットは100種類あり、Bluetoothオーディオでスマホで練習用トラックを流しながら練習する機能もあります。

電源は充電式のリチウムイオンバッテリーで、連続使用時間は約4時間。USB-C端子から充電できるので、外出先でもモバイルバッテリーなどから充電しやすい仕様です。
オーディオインターフェイスとしてパソコンにUSB接続する用途も想定されていますね。
プラグ部分は最大270度回転するので、ストラトキャスターのような舟形ジャック、テレキャスターのようにくぼんだジャック、レスポールのようなサイドジャック等でも安心で邪魔になりにくいでしょう。
高さ8cm、幅3.81センチ、奥行き3.07cm、重量約54g
NUXマイティプラグはスマホアプリ経由の操作に特化したデバイス
ここまで解説してきた製品と比較してしまうと少しニッチではありますが、NUXのヘッドホンアンプ「Mighty Plug(マイティプラグ)」も人気がありますね。
NUXは「ニューエックス」と読み、中国の大手楽器メーカーCherub Technology(チェルブ・テクノロジー)傘下にある2006年創業のブランドです。
Mighty Plugシリーズには、2020年12月に発売されたMighty Plug MP-2と、2022年10月に発売されたMighty Plug Pro MP-3があります。
MP-2のほうがお手頃なのですが、ファームウェアの更新状況、現行機材としての使い勝手を考えるとMP-3のほうがおすすめしやすいと思います。
MP-3では、アンプモデルやIR(インパルスレスポンス)によるキャビネットサウンド、エフェクトの組み合わせが大幅に追加されているのもポイントです。
ただし、マイティプラグを選ぶ場合は、製品の方向性として「アプリ操作ありき」なことに注意しておきましょう。
MP-3では筐体側面でボリューム調整ができるようになりましたが、基本的にはiOS/Android対応のモバイルアプリで操作する前提のつくりです。
ガジェット慣れしている方や、スマホアプリで音作りすることに抵抗がなければ、オールインワンで細かな音作りができるのが魅力ですが、デジタル機材に苦手意識が強い方には少しおすすめしにくいかもしれません。

複数の輸入代理店があり、並行輸入品も見かけるので販売元や保証内容も確認しておこう。
Bluetoothでスマホの伴奏音源を流せるほか、日頃の練習に便利なドラムビートやメトロノームも搭載。充電式リチウムバッテリーの連続駆動時間はMP-2が約3時間、MP-3が約5時間ですね。
USB端子はMP-2がMicro USB Type-B、MP-3がUSB Type-Cとなっており、パソコンにオーディオインターフェイスとして接続する使い方も考慮されています。
MP-2:長さ8.1cm、幅4.1cm、高さ3.1cm、重量約62g
MP-3:長さ8.1cm、幅4.1cm、高さ3.0cm、重量約70g
LEKATOやJOYOはコスパ重視の売れ筋モデルながら本記事では割愛
たとえばAmazonではエレキギター用ヘッドホンアンプの売れ筋ランキングが見れるようになっていて、LEKATOやJOYOの安価なヘッドホンアンプがランキング上位の定番です。
本記事でのおすすめ商品からは割愛していますが、簡単に説明をしておくと、
LEKATO(レカート/レカト)は、中国・広州の広州彩輝科技有限公司が2019年に設立したブランドで、ワイヤレスシステムやエフェクトペダルなどを中心にラインナップしています。
JOYO(ジョーヨー)は、中国・深センを拠点とするJOYO TECHNOLOGYのブランドで、2006年の設立以来、リーズナブルな価格帯のアンプやエフェクター類を広く展開してきました。
どちらもOEM系のガジェット製品や、海外ブランドの低価格帯モデルに理解がある方がコストパフォーマンス重視で選ぶのはアリだと思います。
とはいえ、現状取り扱いのあるショップも限られており、「楽器店員視点で万人向けにおすすめできるか」という観点では他の定番製品を優先しました。
まとめ
今回の記事でおすすめしているヘッドホンアンプは、いずれもギターのアウトプットジャックに直接接続できるタイプです。
通常はギターアンプやエフェクターなどの機材に接続するためにシールドケーブルが必要になりますが、プラグ一体型ヘッドホンアンプであればケーブルを買い足さなくて大丈夫なのが良いですね。

エレキギターは生音で練習していると、力んで強く弾く癖が付いてしまったり、ピッキングの粗さ・ミュートの甘さに気付きにくいなどのデメリットがあります。
もちろんアンプで練習するに越したことはないですが、「鳴らせない」「置けない」「予算が足りない」といった事情がある場合はヘッドホンアンプの導入だけでも検討してみましょう。
あとは最後に一点だけ補足です。ギターのヘッドホンアンプで「Bluetooth対応」と記載されている場合、普通はスマホの音源等をヘッドホンアンプ側へ飛ばす機能のことを指しています。
Bluetoothイヤホンと直接ペアリングできるという意味ではなく、ヘッドホンやイヤホンは本体の3.5mm端子へ有線接続して使うのが一般的です。

少し誤解しやすいポイントなので、「ワイヤレスイヤホンでギターの音を聴きたい」と思っている方はご注意ください。
以上、最後までご覧いただきありがとうございました。






