弦楽器である限り避けられない、この作業が面倒に思う方は少なくないでしょう。
エレキギターにしてもアコースティックギターにしても、正しい音程で演奏するためには毎日のチューニング(調律)が肝心です。
弦楽器のネックは木材の性質上「気温や湿度、弦の張力によって状態が常に変化」するもの。そうすると奏でられる音程もその都度変化してしまいます。
「新しく張ったばかりのギター弦」は特に音程が変わりやすいですが、なじんだ弦であろうとペグ(糸巻)やブリッジの構造的にこまめな頻度の調律が求められます。

ギターを購入して家に持ち帰ってきたとき、ネット通販で楽器が届いたとき。まずは練習の前に自分でチューニングしないといけないんだね。
本記事では、そのルーチン作業に欠かせないアクセサリーとして「ギターチューナー」の種類や選び方と使い方、チューニング関連のよくある質問について元楽器店員の視点から解説しました。
ギター用チューナーの種類とおすすめタイプ
ギターをチューニングする機械について、以前は「チューニングメーター」とも呼ばれていましたが、最近ではシンプルに「チューナー」(Tuner)と言うことがほとんどですね。
ギターチューナーの呼称で一括りにされがちですが、掘り下げるとどのような種類があるでしょうか。主にクリップタイプ、カードタイプ、ペダルタイプと分かれています。

そのなかでギター初心者の方がどれを購入するか迷ったら、近年はクリップチューナーから試してみるのが定番の流れでしょう。
以下では、順番にタイプ別の違いや特徴を説明していきたいと思います。
クリップチューナーはギターのヘッドに挟むだけで操作が簡単
使い方が一番シンプルなのはチューナー本体をギターのヘッド先端に挟むだけでOKなクリップ式チューナーです。
構造は画像のようにヘッドに伝わった弦振動から音程(ピッチ)を検出する仕組み。リアルタイムで液晶画面に「真ん中の音程とのずれ具合」を表示してくれます。

クリップチューナーのメーカー・モデルを選ぶにあたっては、「クロマチックチューナー機能」が付いていることが大切です。
言い換えると「半音ごとにアルファベットで音名を表示してくれる機能」のこと。エレキギター、エレキベース、アコースティックギター、ウクレレなど、各種弦楽器共通で使える仕様にあたります。
2015年に発売されたKORGピッチクロウ・シリーズ第四世代製品。
視認性の高いフルカラーLCDはボールジョイントで角度調整が容易で、ドロップチューニングやカポタストの設定もできます。
PitchCrow-G AW-4Gの検出範囲は通常±1セントのところ、超高精度ファインモード(±0.1セント)への切り替えに対応。CR2032ボタン電池で最長約24時間駆動可能です。
「周囲の楽器の音量・振動が極端に大きい環境」こそ少し苦手ですが、ライブハウスで付けたままの人もいますし、普段使いで苦労することは滅多にないでしょう。自宅練習や路上ライブなどシーンを選ばずに融通が利きます。

ノーブランドなど、あまり安いものだと、反応が鈍かったり、耐久性に難があることもあるから気を付けてね。
上記の公式デモ動画でサイズ感や装着イメージが分かりますね。
コルグ製品はクリップチューナー分野の先駆者で、プロ・アマチュア問わず、使用率がかなり高い人気製品です。
カード型チューナーもエレキとアコギ兼用のものが主流
次にカード型のチューナーですね。前述したクリップチューナーのシェアが急速に増えたのは2000年代中盤以降のこと。
それ以前は主にデスクや譜面台に置いて使う卓上タイプが一般的な形状でした。便宜的に「カード型」と表記していますが、もう少し厚みのある「据え置き型」も含めてこちらの分類。

このタイプのチューナーは、ほとんどの製品で収音用のマイク入力とシールドケーブル入力の二系統を備えています。
つまり使い方は「アコースティックギター」ならチューナー内蔵マイクで生音を拾って、「エレキギター」ならケーブルをインプットジャックに挿してチューニングする機械ということです。
大きな液晶画面を備えた2017年発売のヤマハ製品TDM-700。
メトロノーム機能付きのチューナーで「ミッキー、ミニー、プーさん」といったディズニーデザインのバリエーションも出ています。
バックライトのオンオフが可能で、調律精度は±1セント以内。単4形乾電池2本で最長約130時間駆動してくれます。
KORGやSEIKOなどもカード型チューナーを発売していますが、エレキギターはリアピックアップ(ブリッジピックアップ)を使うこと、アコギはノイズの少ない静かな場所で使うことがちょっとしたコツでしょう。

「吹奏楽部出身、ブラスバンド経験者」で同様の製品を持っていればギターに流用できるよ。
アコースティックギターをチューニングするときに「マイクが周囲の音を拾いがちな環境」では、別売のコンタクトマイクを組み合わせて生楽器に使う選択肢もあります。
こういったカード型・据え置き型のチューナーだと、オクターブピッチの調整など、楽器のメンテナンスをする際にも便利です。
ペダル型チューナーはライブでのチューニングに重宝する
続いて、エレキギターやエレアコをケーブルで繋いで接続するペダルタイプのチューナーを見てみましょう。
ハイエンドな製品も多いタイプですが、マイクが搭載されていない「純アコースティックギター」の人はペダルチューナー単体だと使えないので注意が必要です。

この類の製品は「フロアタイプチューナー」「ステージチューナー」と呼ぶこともありますね。
エフェクターボードに組み込んで、「スタジオやライブで使う前提の設計」になっており、チューニング時にはアンプ側への出力をミュートしてくれる機能があるのが標準的です。
2019年発売のtc electronicポリチューン第三世代製品MINI。
クロマチックモード(±0.5セント)以外に、全弦の音程を同時に表示してくれるポリフォニックモード、超高精度のストロボモード(±0.02セント)にも対応しています。
POLYTUNE 3 MINIは信号の劣化を防ぐ「バッファモード」、余計な回路を通らない「トゥルー・バイパスモード」の出力が選択可能で、正規品は3年間の保証が付いているのも魅力。
ペダル式だと上記tcエレクトロニック以外に、BOSSや他エフェクターブランドのラインナップが豊富でしょう。
値段はクリップタイプや卓上のものに比べると高くなりますが、いずれライブやスタジオで使うことを見越して普段の練習用に選んでも問題ないです。

あとはマルチエフェクターを使う予定であれば、大抵はそちらにチューナー機能が実装されているね。
スマホのチューニングアプリが無料チューナーとしておすすめ
以下では、ハードウェアとしてのチューナーではなく、スマホで使えるチューナーアプリについてご紹介していきましょう。
まず、Googleのチューナー機能は意外とご存知でない方がいるかもしれません。2021年10月7日頃から「Googleの検索結果に楽器用のチューナーが表示される」ようになって話題を呼びました。

目盛り単位が大きいので普段使いには少々使いにくいでしょうか?
みなさんもぜひ一度、(カタカナの「グーグルチューナー」ではなく)アルファベットで「Google Tuner」と検索をかけて試してみてください。
さて、あらためてダウンロード版のチューナーアプリに話を戻しましょう。昨今ではスマホやタブレットさえあれば無料で使えるチューナーアプリがたくさん公開されています。
マイク感度の影響、周囲の環境音に左右されたり、若干反応の仕方に癖があるので、先に取り上げたような各種チューナーを持っているに越したことはないのですが代替品としては十分重宝します。

本記事ではiOS、Android両方で日本語対応しているもので、ユーザー数・レビュー件数が多い定番アプリを選んでおきましたので参考にしてみてください。
広告表示の追従やポップアップ、有料オプションが含まれていますが本記事更新時点で基本機能は無料。
いずれもチューニング精度に定評があり、会員登録やログインが不要かつマイク権限許可のみで使えるものをチェックしてみました。
Guitar Tuna(ギターチューナ)がチューナーアプリの代表格
デフォルト設定では、ギターのヘッドを模したメーター画面に音程が波線で表示されるGuitar Tuna。
私自身かなりの種類チューナーアプリを試してみましたが、個人的にはこちらが一番扱いやすかったです。
レギュラーチューニングの他、ドロップチューニングや、オープンチューニング、100種類以上の変則チューニングがソフトにプリセットされています。
周囲のノイズを除去してくれる機能が標準搭載され、高精度モード、左利きモードといったオプションも役に立つでしょう。

コード表、メトロノーム、音感トレーニングなどのミニゲームまで組み込まれているね。
開発元のYousician Ltd.は月間2,000万人以上のアクティブユーザーがいるオンラインサービス、レッスンプログラムを提供しており、フィンランドのヘルシンキやアメリカのニューヨークに拠点があります。
アプリの使い方やチューニング方法について、上記で公式チュートリアル動画がご覧いただけるので参考にしてみてください。
ProGuitar Tuner(プロギターチューナー)も使い方が分かりやすい
ProGuitar Tunerは、アナログ針風のメーターが半分、指板イメージが半分という非常にシンプルなインターフェイスで、ピッチの目盛りも読みやすいですね。
スタンダードチューニングはもちろん、200種類以上のチューニングパターンに対応。
実際の楽器のサンプリング音を鳴らして聞き比べることも可能で、アプリ版以外にパソコンで使えるWEBブラウザ版もあります。
開発元のProGuitarはスウェーデンのノルヒェーピングにあるソフトウェア企業で、1998年からミュージシャン向けのオンラインコミュニティProguitar.comの運営をしていることで有名です。
こちらも操作は見たまま、直感的に扱えますし、公式動画でビギナー向けの使い方の解説がアップされているのでチェックしてみてください。
他にも同様のアプリはいくつかありますが、このあたりのスタンダードなソフトを基準に比較して探してみましょう。
チューナー選びについてよくある質問
最後にチューナーやチューニングについて、よくある質問・FAQへの回答を整理しておきます。
別途気になることがあれば、当サイトの公式twitterなどでお気軽にお問い合わせいただければと思います。
エレアコを使っているなら別売りのチューナーは用意しないでも大丈夫?
そもそも「エレアコを持っているならチューナーを買う必要がない?」という疑問ですね。
写真のような「プリアンプ」が搭載されたエレアコであれば音程を検知する機能が付いている機種も多いです。

その仕様が「各弦ごと個別のチューニングメーターが液晶画面に表示される」タイプであれば、チューナー不要で事足りてしまうのではないでしょうか。
ただしメーカーや製品によって、チューナー部分のスペックはそれぞれ異なります。そしてチューナー機能がないエレアコも珍しくありません。
簡易的なインジケータ―のみの仕様、「視認性や感度がイマイチだと思ったとき」はチューナーも別に用意した方が安心といえるでしょう。
チューナーの測定精度は何セントの仕様を選べばいい?
ギター初心者の方だと、チューナーの測定精度まで気にする人は少ないかもしれませんが、測定精度プラスマイナス1セント以内と書いてあれば普段使いに困らないスペックです。
「cent」という単位については、たとえば「ド」と「ド♯」の間の半音が100セント分なので、その100分の1を音程差異を検出できる精度の機械という意味です。

チューナーの機種によって、普段使い用のモードと高精度モードを切り替えできるモデルも増えているよ。
スペックだけでは分かりにくい「表示のレスポンス・挙動」がメーカーや機種によって異なるものの、精度が高いモードほど、ペグの回し具合がシビアになるのでチューニングに要する時間は長くなるでしょう。
チューニングのキャリブレーション(基準音ヘルツ設定)とは何?
ギターのチューニングをする際に「キャリブレーション」という言葉をときどき耳にすることになります。ここでは5弦のA(ラ)の音を440Hzにするのが一般的です。
その基準音の音程(ピッチ)を細かに可変できる機能がキャリブレーション設定と呼ばれます。
「ヘルツ(Hz)」は1秒間に音の波が何回振動するかを表す周波数の単位。

あまり安価なチューナーだと「基準ピッチのキャリブレーションが固定」なのがあるね。
「ピッチが異なる音源、鍵盤など他の楽器と合わせるシチュエーション」を考慮して、435~445Hzくらいの範囲は調整可能なものにしておいたほうが無難でしょう。
音叉やピッチパイプを持っていればギター初心者でもチューナーは不要?
音叉(チューニングフォーク)で5弦開放弦Aの音だけ合わせて、他弦は耳で合わせていく方法があります。
楽器経験者であれば大丈夫ですが、未経験のギター初心者だと慣れるまで少々難しいので気を付けましょう。逆に音感のトレーニングに試してみるのはおすすめといえるでしょう。
あとはピッチパイプ(調子笛)というアクセサリーも、二十年以上前だとギター初心者セットのアクセサリーでおなじみだった思い出があります。
チューナーなしだと最初はオクターブが分かりにくかったり、「チューニングが合っているか自信がない」といった使い方に苦労するかもしれません。

純正律・平均律の違いについて本記事では割愛しているよ。
ストラトタイプのギターのチューニングが合わないときはどうすればいい?
フェンダーのストラトキャスターなど、アームが付いているギターの多くは、弦の張力に応じてブリッジが可動する構造です。
ブリッジがボディから離れている状態を「フローティング」というのですが、その位置を安定させるためには何度もチューニングを繰り返さないといけない仕様になっています。(※アームでヴィブラートをかけたときにチューニングがずれるのとは別の話)

「ストラトキャスターのチューニングが合わない」という悩みは頻出ですが、フローティングの高さやトレモロスプリング(バネ)の柔らかさ、締め込み具合によって音程の安定具合は全く変わってきます。
特に太い弦はテンションが強くブリッジ位置の変化が大きいので少々時間がかかるのが普通です。弦1本ずつではなく「低音弦→高音弦→低音弦→高音弦」という具合に交互でチューニングを繰り返しましょう。
あまり違和感があるときは楽器店やリペアマンに相談。アームを使わない人向けには、背面のトレモロスプリングを締めこんでブリッジをボディに接地させる(ベタ付け)セッティングも定番です。
まとめ:録音録画の前にはチューニングの再チェックを
最後に補足として、「ギター初心者あるある」なのですが、チューニングがずれたまま気付かずに演奏している人は結構多いです。
「練習の前にチューニングを合わせること」を習慣として定着させておくことで、音楽・楽器未経験の方でも音程がずれたときに自然と気付けるようになってきます。
特にSNSへの投稿・配信、録音や動画撮影の時も入念なチェックを忘れないようにしましょう。
Amazonにはギターチューナーの売れ筋ランキングがあって自動更新されているので、直近の人気製品を探すのに役立つと思います。 楽天市場のランキングのほうは、重複があって少し見にくいと思いますが、期間をリアルタイムやデイリーではなく「ウィークリー」で選択してみるのがおすすめです。以上、ご覧いただきありがとうございました。