FENDERといえば「エレキギターやエレキベースのブランドイメージ」が先行するので、アコギ・エレアコ製品をラインナップしていることを意外に思う方もいるかもしれません。
じつはフェンダーは1960年代からアコースティックギターを生産しているメーカーなんです。近年は新作が追加される頻度も上がってきました。
今回は元楽器店員がギター初心者向けにおすすめしやすいモデルとして、「カリフォルニアシリーズ、クラシックデザインシリーズ」の現行製品・人気機種(2023年6月現在)に注目してみましょう。
フェンダー・カリフォルニアシリーズはPLAYERモデルが好評
私たちが普段見慣れているアコギは、たいてい左右対称のヘッド形状で「6弦~4弦」「3弦~1弦」のペグ(糸巻)が両側に配置されていますよね。
「フェンダー・カリフォルニアシリーズ」(2018年発表)では、さながらエレキギターのような片側6連ペグ(シックスインライン)がユニークなところです。
「ナット幅(ヘッドの付け根付近)」は約43ミリ(1.69インチ)とアコギで標準的な仕様でありながら、エレキギターを弾いている感覚に近い薄めのネックグリップもポイント。
同ラインナップはアメリカ・カリフォルニア州の有名なビーチ(地名)に由来したモデル名を冠しており、サイズ別に「ニューポート、レドンド、マリブ」といったバリエーションになっています。
それぞれのサイズのなかで「クラシック、スペシャル、プレーヤー」とグレードが分かれていますが、あまり選択肢が増え過ぎても難しいと思います。
ギター初心者の方は以下のCALIFORNIA PLAYERモデルから順番に候補にしていくのがおすすめです。
ミディアムサイズのニューポーター・プレーヤーが定番のエレアコ
まずチェックしてもらいたい「ニューポーター」モデルはカリフォルニアシリーズの中間的なサイズで売れ筋のエレアコ(録音に便利なマイク機能付きのアコギ)です。
特に「シャンパン、アイスブルー、キャンディアップルレッド、オリーブ」など他メーカーではなかなか見かけない色味が目をひくところでしょう。
ウエストの絞りが若干高めの位置(ネック寄り)にあるNewporterボディ。ヘッド表面まで着色された「マッチングヘッド仕上げ」で、いかにもフェンダー製品らしいスタイリッシュな装いが際立ちます。
フィッシュマン製のチューナー機能付きプリアンプは、液晶に音名が表示されるスタイルなので見やすいですね。
画像に写っているショルダー部分のツマミは「ボリュームとトレブル(高音域)・ベース(低音域)」の調整を行うためのもので、ライブやレコーディングで即戦力となります。
弦長は25.6インチ(約650ミリ)と長めだけど、弾きやすいのはネックシェイプの影響が大きいね。
本製品はボディトップにスプルース材の単板で「スキャロップドXブレーシング」を採用。
ギター初心者の方だと聞き慣れない専門用語ですが、「トップ板裏側の力木を少し削ること」でダイナミックな響きの生音が楽しめるように製作されたモデルです。
アコギの力強い生音を重視するならレドンド・プレーヤーが候補
続いてはカリフォルニアシリーズ・プレーヤーモデルの「レドンド」を取り上げます。
楽器のサイズは、ニューポーターより一回り大きいのですが、それでも野暮ったい感じがしない絶妙なシルエットが良いですね。
先に紹介したデモ動画を見ると、何となくサウンドの違い・特徴が伝わりますでしょうか。
カリフォルニアシリーズの中でRedondoは最もボディの容積が大きいので、中低音の迫力であったり、出音の力強さが顕著になってきます。
光沢のあるゴールド・ピックガードが良いアクセントだね。
型番に「クラシック」が入った新色(上記)も2020年6月から発売されていますが、Playerバージョンの場合は高音側のハイポジションが弾きやすいようにカッタウェイが施されているのが利点です。
「スプルース材による単板のボディトップ(スキャロップドXブレーシング)」「25.6インチスケール(約650ミリ)のネックスケール」といった仕様に関しては、ニューポーターと共通のスペックになっています。
スモールサイズのパーラーギターはマリブ・タイプが根強い人気
それから下記の「マリブ」モデルは、小ぶりなアコースティックギターを指す「パーラーギター」として分類されています。
かわいらしいスモールサイズのボディに合わせて、弦長が「24.1インチ (約612ミリ)ショートスケール」と非常にネックが短い製品です。
パーラーサイズは「ミニギター」ほど小さくはないですが、体格が小柄でスタンダードなアコギが不安な方、手の小さい方からの評判が特に高いですね。
出音も比較すると繊細な傾向にあるため、エレアコの音声信号処理を担うプリアンプはMalibu製品のためにカスタマイズ・最適化されています。
そして、関連製品でワンランク上のグレードになりますが、2020年6月に発売されたフェンダー・マリブ・スペシャル。
さほど価格差は大きくないので初心者~中級者の方でも選択肢に入れやすいところでしょう。
こちらは少し渋い雰囲気で、ボディのサイドバックおよびトップが全てマホガニー材の単板(オールマホガニーボディ)で製作されています。
そのマホガニーならではの木目や色味を活かしたサテンナチュラル仕上げが特徴。
フェンダーのアコギといえば、色鮮やかなイメージが先行するかもしれないけど、こういったウッディなフィニッシュも人気なんだよね。
見た目の違いだけでなく、スプルース材で製作された通常のマリブモデルと比較して、やや甘めで乾いた音色に感じる方が多いのではないでしょうか。
さらにお求めやすいのがフェンダー・クラシックデザインシリーズ
さて、フェンダーのアコギで「カリフォルニアシリーズ」より予算を抑えたい方には「クラシックデザインシリーズ」がおすすめしやすいです。以下で見てみましょう。
型番に「クラシック」を謳う(うたう)くらいなので、オーソドックスな佇まいのアコギで主張は控えめ。それでもオリジナル形状のピックガードやストラップピンの配置などがちょっとしたアクセントになっています。
本記事では上記デモ動画でも紹介されているコンサートサイズ(小さめ)とドレッドノートサイズ(大きめ)で代表機種をピックアップ。
製造時期によって仕様がマイナーチェンジされてきましたが、「Easy-to-Play」をコンセプトにしたネックシェイプは指板の端が滑らかに成形されており入門モデルとして安心の弾き心地です。
初心者でも扱いやすいコンサートサイズならCC-60S系統モデル
CC-60Sの型番に入っている「CC」の名前は「Classic DesignシリーズのConcertボディシェイプ」に由来します。
カリフォルニアシリーズのマリブほどではないものの、やや小さめのアコギ(コンサートシェイプ)で万人向けのサイズ分類ですね。
他社エントリークラスの「安いアコギ」では複層ラミネイトされた合板(ごうはん)仕様が多いところ、CC-60Sは、あくまでトップ単板(たんばん)にこだわって製作されています。
このあたりはお手頃な価格帯でありながら、できるだけ音質面に妥協しないフェンダーのスタンスが表れているといえるでしょう。
フォークサイズともいわれる引き締まったウエスト。製品名末尾の「S」が「単板のトップ材=solid」であることを指しています。
全体的には癖がないスタンダードな雰囲気ですが、サウンドホール周りのデザインや、小さめのポジションマークなど洗練された印象を演出しています。
若干混同しやすいですが、「CC-60Sモデル」はマイクが付いていない純アコースティックモデルで、「CC-60SCE」モデルのように型番に「CE」が入ると「カッタウェイ付きのエレアコ仕様」に変更されます。
値段は少し高くなってしまいますが、CC-140SCEモデルになるとサイドバック材の仕様やピックガードの柄が異なり、なんとハードケースまで標準付属という奮発っぷり。
※品薄のタイミングでは高値での出品も目立ちますのでご注意ください。
貫禄あるドレッドノートサイズのアコギならCD-60S系統モデル
CD-60Sのように型番が「CD」から始まるモデルは「Classic DesignシリーズのDreadnoughtボディシェイプ」にあたります。
アコギとして「標準サイズ」に位置付けられますが、日本人の体格からすると「大きめの部類」に入るギターだと認識しておくのがいいでしょう。
ボディが大きいとネックが長いと思うかもしれませんが、先に挙げたコンサートサイズと共通のネックスケール(弦長)になっており25.3インチ(約643ミリ)ほど。
カリフォルニアシリーズの「レドンド」「ニューポーター」より少し短くなっているんだよ。
こちらもしっかり単板スプルーストップで製作されており、コストパフォーマンスに関してはばっちりですね。
なお、「CDシリーズ」には12弦モデルやレフティのバリエーションもあるので注文の際に間違えないように十分注意しましょう。
「CD-60S」だとマイクが付いていない純アコースティックモデルで、「CD-60SCE」になるとカッタウェイ付きのエレアコ仕様になります。
後者の「SCE仕様」では、オールマホガニーモデル(ブラウン系のナチュラル仕上げ)のようなバリエーションも評判が良いです。
前述のCCシリーズと同様にCD-140SCEモデルになると、サイドバック材やピックガードの差別化があり、ソフトケースの代わりにハードケースが付属しています。
念のため12弦モデルのバリエーションと間違えないように注意してください。
まとめ:アウトドアにも映えるFENDERならではのアコギ・エレアコ
以上、今回は「アコギ入門者向けのギター選び」という観点から、FENDERのカリフォルニアシリーズとクラシックデザインシリーズをピックアップしてみました。
下の画像はSONORAN(ソノラン)という旧モデルですが、フェンダーのアコギは海や山のアウトドアに持ち出しても絶妙でかっこよく映りますね…。
なお、Fenderのアコギでは廉価版の「オルタナティブシリーズ」という製品もあるのですが、近頃は店頭で見かけることが少ないので、より入手しやすい現行機種に絞ってご紹介しました。
一方で上位モデルに関しては「パラマウントシリーズ」というラインナップがあるので、予算の工面ができそうであれば合わせてチェックしてみてください。
本記事で紹介したモデルに価格帯が近いところで、演奏性重視のアコギ/エレアコというと、「アイバニーズのパフォーマンスシリーズ」も一味違った雰囲気で比較候補になると思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。