「楽器店でギターを試奏したいけど、なんとなく雰囲気が怖そう」「そもそもギターを試奏しないで買うことはできるのかな?」
楽器屋さんに入る際にはいくつか注意しておきたい暗黙の了解がありますが、ギター初心者であれば、楽器屋のマナーや作法なんて知らなくて当たり前。
ただ誰も教えてくれなかったことで損をしたり、知らなかっただけなのに店員さんに注意されたら気分が良くないですよね。
楽器店員視点でアドバイスをまとめてみましたので、この機会に楽器店・試奏(試し弾き)のマナーについて予習してみましょう。
楽器店(ギターショップ)に来店するときのマナーについて
じつは楽器店のマナーといっても非常にシンプルなものばかり、守った方が良い理由が分かってしまえば特別に難しいことはないです。
以下では特に、ギターの入門モデル・初心者セットを探しに行くようなシチュエーションを想定した内容を解説していきます。
手荷物は最低限にしておくのがおすすめ
まずは楽器屋さんに入るときの手荷物は最低限にしておきましょう。
こぢんまりとした街角の楽器店はもちろんですが、都心にあるような大型店舗でも、どうしても窮屈な展示エリアができます。
ゆったりした売場展示になるように工夫しているショップはあるものの、たいていの楽器店ではギターが隅々まで所狭しと陳列されていることでしょう。
とりわけ通路や階段付近など顕著ですが、不意に自分の荷物がぶつかったら、それはもうドミノ倒しのごとく…大変な事態になりますよね。
入店時に荷物の多いお客さんを見かけると、楽器店員はなるべく目を離さないようヒヤヒヤ注視しています。
初心者セットを購入する予定であれば、帰り道の荷物も両手一杯に増えるはず。「ギター購入後の持ち帰り」を見据えて、できるだけ最低限の手持ちで来店できるようにするのがおすすめです。
楽器は水に弱いよ。テイクアウトの飲み物を持ち込むのもやめておこうね。
来店時間に余裕があるスケジュールを組む
次にギターを見に行く時間帯について。候補を絞り込むタイミングでは試し弾き(ためしびき)・試奏(しそう)をすることになり、迷っているうちに時間はあっという間に過ぎていきます。
いざ、佳境というタイミングで時間に追われながら焦って決めるのは不本意ですよね。閉店時間が近いと店員側も内心ですごく焦って案内しています。
お会計を済ませてからも、検品・調整の確認、付属品の準備など、お店を出るまで思っている以上の時間がかかるもの。
とりわけショッピングローン(分割払い)を考えているときには、審査手続きに時間がかかるので十分余裕のあるスケジュールにしておきましょう。
せっかく購入を決めたのに、その日のうちに持って帰れなかったらがっかり意気消沈するもんね。
服装にも気を付けておかないと危ない
あとは実店舗に行く際には服装にも注意しておきましょう。購入候補から何本か試奏で比較できますが、ちょっとした気遣いが必要になります。
たとえばベルトのバックル金具が出ていたり、指輪・ブレスレットなどのアクセサリーを付けているとギターの塗装に簡単に傷が入ってしまうんですよね。
楽器店に並んでいるギターのほとんどは、店頭に展示されている現品を新品として販売します。
つまり、倉庫にピカピカの在庫があることは少なく「店頭品は試奏用のサンプルではない」のが標準。
弾き込んだギターに傷が増えていくのは貫禄が出てかっこいいのですが、展示商品に傷を付けない配慮は大切ですね。後述するように奏法面でもガシガシ弾くのは敬遠されやすいです。
アクセサリー・キーホルダーをお店で外すという選択肢もありますが、熱中して忘れ物をしてしまう方も非常に多いのでご注意ください。
身だしなみついでにいうと、ギターは左手の爪を短く切っておかないと上手に弦を押さえられないです。初心者の方は事前に爪切りも済ませておきましょう。
大人数で店内に固まらないことも重要
店頭で「大人数で固まらないマナー」は手荷物のトピックと関連します。
はじめて楽器屋さんに行くときは、部活やサークルのメンバーに連れ添ってもらって一緒に買い物に行くこともあるでしょう。
ついつい試奏アンプの周りに密集しすぎて通路を塞いでいる状態に陥りがち…。冒頭で触れたように楽器店には、どうしても窮屈な展示スペースができやすいです。
ギター選びに没頭して他のお客さんの邪魔になっていないか、周りへの配慮は忘れないようにしたいですね。
無断で楽器に触らないルールは絶対に守る
楽器店内のPOPで注意喚起されていることが多いですが、「無断で楽器に触らないこと」は特に強調しておきたいマナーです。
ギタースタンドやハンガーに展示されている楽器に触りたくなる気持ちは分かります。もちろん手に取って試してもらいたいのですが、
「ほんの少しでも触ってみたい」と思った時点で、フロアの店員さんにお願いして取り出してもらうようにしましょう。
アパレルショップだと「お手に取ってご自由にご覧くださいねー」と言われたりしますが楽器店は別なんです。
よく見ると、ギターが動かせないように細い防犯ワイヤーでつながっていることもあります。それに気付かずに楽器を引っ張り出そうとすると当然大変なことに。
「軽く持ち上げて重さだけ見てみたい」とか「ネックの握りだけ一瞬チェックしたい…」というとき。
忙しそうなスタッフに遠慮したくなると思うのですが、「お客さんがギターを落下、転倒させてしまうトラブル」はとにかく多いんです。
ギターがすぐ手の届く場所に展示されている場合であっても、必ず先に店員さんを呼んで声をかけるようにしましょう。
海外だと「セルフで好きに触っていいよ」というショップもあるんだけど、日本では一般的じゃないよ。
試奏するギターは慎重・丁寧に扱うこと
繰り返しになりますが「ギター試奏のマナー」としては店頭のギターがサンプル品ではなく現品販売されるものだと知っておくことが肝心。
あまり神経質になりすぎる必要はないですが、試奏中のギターはできる限り慎重・丁寧に扱うように心がけたいですね。
特にはじめは楽器の全長がイマイチ分からないもの。周囲の楽器にぶつけたり、手を滑らせたりしないように気を付けましょう。
試奏のときに「友人と交代して遊び出す」「やたら激しく演奏する」「大音量にする」「延々と練習し始める」みたいなパターンはNGなので、今のうちに覚えておくのがいいかもしれません。
試奏の依頼から購入を決めるまでの流れ
あとは「どんな手順で試奏したらいいか、何を弾いたらいいか」迷うと思いますが、「ギターの試奏に不慣れなこと」を先にスタッフに伝えてしまった方が楽です。
はじめに店員さんが楽器のチューニング(調律)して渡してくれるはずなので、抱えたときの感覚、ネックを握った感覚など他の機種と比較させてもらうのが無難。
最初の一本で細かな違いは分からないと思うのですが、比較対象があれば特徴が把握しやすくなります。
よく「試奏で何を弾けばいいの?」と質問されますが、あんまり身構えると緊張してしまうので、何となくジャラーンと弦をはじいて弾いてみるだけで十分。
コード(和音)の押さえ方などが分からなくてもOKです。しばらくすると店員さんが「いかがですか?」と感想を聞きにきます。
納得した楽器が見つかったら、「これにします」「これを買います」と伝えればお店の方が最終調整や付属品の準備、お会計を進めてくれます。
楽器店のマナー・試奏についてのよくある質問
その他、「楽器店のマナーや試奏についてのよくある質問」は下記に整理していきたいと思います。
当サイトの公式X(旧twitter)でもギター初心者の方からの質問を受け付けていますので、本記事で分かりにくいことがあればお気軽にご相談ください。
Q:ギターの購入前には絶対に試奏が必要?
ギター購入前に試奏をしないで済ませたい、というのは初心者に限ったことではなく「下手だから楽器店での試奏は恥ずかしい」「怖い」「めんどくさい」と思う方は少なくないです。
結論から言うとギターを試奏しないで買うことはできます。
「これ買いたいです」というと、だいたいスタッフから「お試しなさいますか?」と聞かれます。
たとえば「大丈夫です。初心者なので調整と検品だけお願いします。」と一言伝えれば試奏なしで購入できます。
せっかく「通販ではなく、実店舗に行く」のであれば、勇気を出して弾いてみるのがおすすめですが無理しなくても大丈夫ですのでご安心ください。
Q:自分の代わりに店員さんに試奏してもらえる?
自分で試奏するのは恥ずかしいけど、音は聞き比べたいという場合、楽器店員も「初心者なんで、代わりに弾いてみてください」とお願いされることには慣れています。
ギターフロアのスタッフであれば、「こう弾くとこういう音が出て…」とギターの特徴や機能を説明しながら、デモ演奏をしてくれると思います。
ただし、楽器屋の店員であればみんなギターを上手く弾けるとは限らないのであしからず。
あとは、実際に自分で抱えてみて、重量やサイズ感、ネックの太さなどの雰囲気がつかめればGOODだね。
特にアコギになると、「自分で弾いた音と、誰かに弾いてもらった音」で印象が変わるので、自分でギターが弾ける場合でも、客観的に特徴を判断するため店員さんにも弾いてもらうのもよいでしょう。
Q:試奏後は買わないといけない雰囲気になる?
当日は購入しない予定だけど「試奏だけでも大丈夫?」という質問。「試奏したけど買わない」というのは、洋服を試着するときの空気感に近いでしょうか。
お店ごとに考え方の違いはあれど、基本的に展示品が売り物なので「買わないけど、弾きたいだけ」というのは敬遠されます。
その一方で「欲しかったんだけど、試してみたら自分の好みには合わなかった」ことをちゃんと伝えれば、購入を見送ることになってもマナー違反ではないですよね。
向こうも商売なので粘ってくるかもしれないですが、押し売りスタイルの接客をする店員は近年だいぶ少なくなりました。
本体の購入を見送って「ピックだけ、弦だけ、ケーブルだけ…」といった感じにアクセサリー類を購入するのも自然だと思います。
Q:試奏を頼んでも断られる場合はある?
「ギターの試奏を断られた」という話をSNSなどで目にすることがありますよね。楽器店によって、何かしらの理由で試奏できないモデルはあるかもしれません。
特に高価なハイエンドギターやヴィンテージはショップによって制限を設けているケースがあるでしょう。
「冷やかし」でないのが明らかで、真剣に購入を検討していることを表明すれば、多くのショップは拒否せず試奏されてくれるはずです。
そのときの混雑具合などの事情によっては、順番待ちで案内されることはありますので、そのあたりは注意しておきましょう。
Q:お店が混んでる時間帯を避けるためには?
さて、ギターをゆっくり検討するのに、できるだけお店の混雑時を避けたいという方も多いでしょう。
ここ数年の情勢的に時短営業などのイレギュラーもありましたが、やはり土日祝日が混み合っている可能性が高いです。
あとは学生さんが長期休暇の時期になると混雑しやすい立地もあります。
落ち着いて買い物したいとき「天気の悪い日や、開店直後・平日の日中が狙い目」なのは、他の小売店と変わらないですね。
ただし、大抵の楽器店はシフト制ゆえに、混雑しにくい平日は店員の人数が少なめという傾向もあります。近頃はGoogleの検索結果で混雑予想が出てくる店舗もありますね。
補足:ギターのレンタルを試奏代わりに利用するのも選択肢
以上、細切れで語られがちな「楽器店のマナーや作法」についてまとめて解説してみました。
「試奏でどんなフレーズ、何の曲を弾けばいいか迷ってしまうこと」も「あるある」ですが、気構えて演奏に集中しすぎると楽器本体の性質・特徴に意識が向かなくなってしまうので気を付けましょう。
「試奏が苦手、店頭で試すだけではよく分からない」というときは、ギターのレンタルやサブスクもポピュラーになっているので、試奏がわりにそういった手段も選択肢でしょう。
マナー関連の話題でよく出てくる「店頭値引きの可否」については別記事にまとめてありますので参考にしてみてください。
以上、最後までご覧いただきありがとうございました。