PRSはカルロス・サンタナのトレードマークとしても有名ですが、彼のファンから寄せられた「もっと手頃な価格の製品も作ってほしい」という要望がSEシリーズ誕生のきっかけとなりました。
本記事では、SEシリーズの代表製品であるSE Custom 24の歴史と仕様の変遷を振り返りながら、現行モデルの特徴や他SEモデルとの違いなど、元楽器店員視点で分かりやすく整理してご紹介します。
最初のSEはCoreシリーズと距離を置いてスタート
PRS SEシリーズは、2001年に発売されたSE Santanaから始まりました。
アメリカ本国(メリーランド)以外で製作された初のオフショアモデルであり、現行のSE SANTANAとはボディ形状やコントロールノブの配置も異なる初代SE独自のデザインです。
オールマホガニーボディで、エッジに丸みを持たせたフラットトップ。指板に斜めに入ったスラッシュインレイが特徴的でしょう。
当時の米国での小売価格は738ドル、ヘッドロゴは「Santana SE」で表面にPRS表記はありませんでした。
PRS Guitars公式YouTubeチャンネル|The First SE Guitar | From the Archives
初代SE Santanaを振り返る公式動画では、メリーランドで製作したプロトタイプをもとに海外工場で製造を進め、約2年半にわたって試作と修正を繰り返したことが語られています。
ヘッド裏には韓国のWorld Musical Instrument(WMI)の社名が記載。「生産工場を公表すべきではない」と反対の声が上がったものの、現地の職人に誇りを持ってもらいたかったとPaul Reed Smith氏が言及しています。
当時のエピソードについては、『The PRS Guitar Book』の著者Dave Burrluck氏が、SEシリーズの立ち上げに携わったJack Higginbotham氏へ行った2019年のインタビューも参考になります。
2003年にはPRSロゴの入ったトラスロッドカバーを採用するようになりますが、メイプルトップやバードインレイなど、従来のPRSを象徴するモチーフを廉価版へ展開することには慎重だったそうです。
PRS SE Custom 24の登場と仕様変遷
SEシリーズでメイプルトップを採用したCustomは2005年に登場しました。
マホガニーのWide Fatネックにムーンインレイ、22フレット仕様なのでCustom 22のSE版という位置付けですね。
24フレット仕様のSE Custom 24は2009年1月のWinter NAMM SHOWで披露されました。メイプル材のWide Thinネックを採用しており、この時点でのポジションマークはムーンインレイです。
その後、2010年の25th Anniversary SE Custom 24でポジションマークがBirdインレイに変更。ピックアップにはSE HFS(Hot Fat Scream)/SE Vintage Bassが搭載され、2011年以降のSE Custom 24にも引き継がれます。

2012年にはボディ形状が従来のFlat StyleからBeveled Top Carveへ変更。Push/Pull Toneと3-way bladeも加わり、エレガントな外観と幅広い音作りを両立する本家Custom 24のコンセプトにかなり近づきました。
この時期から、SE Custom 24 – 7 String、SE Floyd Custom 24といった派生モデルも増えています。
現行SE Custom 24の特徴と生産国
ゴシックフォントのSEロゴに代わって、2017年にPaul Reed Smithのシグネチャーロゴをあしらったヘッドデザインを採用。ピックアップもSE HFS/SE Vintage Bassの組み合わせから85/15 “S”へ変更されることになりました。
PRS SEの生産国については、2014年頃からWMIの韓国製と並行してPT Wildwoodによるインドネシア製(IAシリアル〜IEシリアル)がありましたが、2018年からCortブランドで知られるCor-Tek製(CTIAシリアル〜CTIIシリアル)への移行が進み、2019年にはインドネシア・スラバヤにSE専用の生産施設が設けられています。
2012年から続いていたベベルドトップに代わり、2021年にはトップ面全体に緩やかな起伏を持たせたShallow Violin Carveが採用。これは2019年にSE版が登場したPaul’s Guitarのデザインに倣ったものです。
また2021年は、KORG Import Division(KID)がPRSの輸入総代理店業務を終了し、Paul Reed Smith Guitars Japanへ業務が移管された時期でもあります。
2025年にはLampshadeノブとFlat-Grip形状のスイッチチップ、2026年にはWing Button付きチューナーとSloped Pickup Ringsとパーツ類のアップデートが続いているところにも注目したいですね。
PRS SE Custom 24は弾きやすい?
2026年現在、SE Custom 24のネックは24フレット/25インチスケールで、Wide Thinシェイプが標準仕様となっています。
直訳すると「幅広で薄い」ネックですが、ナット幅は約42.9mmなのでエレキギターのオーソドックスな寸法ですね。
薄さは1フレット付近で約20.6mm、12フレット付近で約22.6mm。Ibanez RG系で見られる約19.0mm→約21.0mmの薄型ネックよりはやや厚く、Yamaha PACIFICA系の約20.9mm→約22.9mmに近い寸法です。
そして、PRSの25インチスケールという弦長は、Fender/Squier系に多いロングスケールとGibson/Epiphone系に多いミディアムスケールの中間にあたります。
弦のテンション感やフレット間隔も両者の中間で、他機種から持ち替えた時の違和感は少ないほうでしょう。
指板Rは10インチで、コードワークからリードプレイまで幅広く対応。24フレットのダブルカッタウェイ形状でハイポジションにアクセスしやすいのも魅力です。
総じてクセの少ない取り回しの良さが評判で、コイルタップによる音作りの幅も広く、ジャンルやプレイスタイルを問わず使いやすいモデルになっています。
ヴィンテージ志向の方にはグリップ感がやや味気なく感じられるかもしれませんが、オールラウンドにおすすめしやすい機種の定番です。
PRS SE Custom 24のバリエーションと他のSEモデル
現行モデルのSE Custom 24にはFloyd、Lefty、24-08、Quilt Package、Semi-Hollow Piezoなどのバリエーションがあります。
FloydやQuilt系はエボニー指板を採用。24-08はTCI “S”ピックアップとミニトグルによって8パターンのスイッチングが可能なことが型番の由来です。Semi-Hollow Piezoはセミホロウ構造にピエゾピックアップを組み合わせたモデルとなっています。
その他、最近よく売れているのがボルトオン仕様のPRS SE CE 24です。SEシリーズに加わったのは2024年で、ネックジョイントを除けば基本スペックはSE Custom 24に近いですね。
SE CE 24 Standard Satinは、サテン塗装のオールマホガニーボディで一層価格を抑えたモデルで、2026年にはトレモロなしのSE CE 24 Standard Stoptail Satinも登場しています。
また、2022年にはJohn MayerモデルのSE Silver Skyが話題になりましたね。Silver Skyは22フレット/25.5インチ/3シングルという仕様で、SE Custom 24と比較するとかなりトラッド感が強い方向性です。
シグネチャーモデルではDGT、Chleo、Ed Sheeran、Mark Holcomb、Mark Tremonti、Paul’s Guitar、Santana、Zach Myersなどが生産されています。
McCarty 594/Singlecut、Hollowbody I/II PiezoやHollowbody Standard、NF3/NF 53、Special Semi-Hollow、Studio、Swamp Ash Special、277など、2020年代に入ってSEシリーズのラインナップ拡充が加速しています。
まとめ
リリース当初はUSA製モデルと明確に差別化されていたSEシリーズですが、その後は徐々にPRSらしい仕様を追いかけるように採用してきました。
一方のCore Custom 24もその間に進化を続けています。2011年には59/09ピックアップ、5-way blade、Pattern Thin/Pattern Regularを採用し、2012年にはContoured Pickup Bobbin(Squabbin)、2015年には85/15ピックアップへ更新。その後もGen III TremoloやPhase III Locking Tuners、DMO(Dynamic, Musical, Open)ピックアップなど、さまざまなアップデートが重ねられてきました。
SEが本家Custom 24に近づいてきた一方で、Coreも常にその先へ進み続けてきた関係ですね。本記事では割愛しましたが、SEとCoreの間には2013年から米国製のS2シリーズも用意されています。予算や仕様の違いも含めて比較してみてください。
最後までご覧いただきありがとうございました。





