はじめてのアコギ選びだと「そもそも予算の目安であったり、ギターのメーカーの見当がつかない、モデルやデザインの決め方が全然分からない」ところからスタートする方がほとんどでしょう。
私が楽器店に勤務していたころ、比較基準に紹介する定番かつ、最初におすすめしやすいアコギでヤマハFG800/FS800番台シリーズが代表的な製品でした。
とはいっても、じつは同シリーズには全11機種のラインナップが展開されています。
型番の数字部分(800/820/830/840/850)によって仕様が異なり、ギター初心者の方には少々違いが分かりにくいんです。

2023年3月時点のメーカー希望小売価格は税込33,000円~税込49,500円の範囲だよ。
本記事では「ヤマハFG/FS800番台の特徴や違い」を簡単に比較できるように、選び方をステップ形式で解説してみましたので、ぜひ参考にしてみてください。
ステップ1:FGシェイプとFSシェイプでボディ形状の好みを選ぶ
まず、ヤマハのアコギのうちFG/FSの違いから解説していきましょう。
モデル名の頭に付いている「FG」と「FS」でギター形状(シェイプ)に違いがあるところに注目してみます。
下画像はヤマハの同シリーズで最も安い価格設定のFG800/FS800モデル。
ボディ中央付近をよく見るとFG/FSで「くびれ具合」が違うのが分かるはずです。ここで各シェイプの違いを説明するときの常套句になっているのが、
- 「コードストローク派にはボディが大きいFG(エフジー)シリーズ」
- 「フィンガーピッキングやソロギター派にはボディが小さいFS(エフエス)シリーズ」
という住み分け。ただ、それを聞いて「???」となったら、今の段階であまり気にしなくて大丈夫です。
というのも、最初のアコギであれば色々な演奏スタイルに挑戦することになるし、「自分がどういう奏法にハマるか」は少し先にならないと分からないからです。

それぞれ音量も違いがあるけど、ビギナーの人が想像しているほど大きな差ではないよ。
少しだけ噛み砕くと、音色の性格(キャラクター)に関しては「楽器の大きさから影響を受けるところ」があるので力強いサウンドが出しやすいのはFG、繊細なサウンドが出しやすいのはFSという傾向になります。
FGとFSのどちらが好みかは直感で選んで欲しいのですが、楽器の抱えやすさと弦の押さえやすさではFSモデルに軍配が上がります。
それは主に「ボディの厚みが少し薄い」のと、ネックの弦長が短いことで「同じ太さの弦でもハリが弱くなる特徴」によるもの。
かといって、ここで誤解してもらいたくないのは「FGモデルが特段弾きにくいというわけではない」です。
極端にギターのサイズやデザインが違うわけではなく、FGボディとFSボディを比較するとわずか1センチ~3センチ。
あくまで慣れの側面が大きいので、「どちらかといえばFSモデルが弾きやすいかも…」といったニュアンスだと捉えていただければと思います。
ヤマハFG/FSのサイズを比較すると、弦長は650mm/634mm、全長は1,038mm/1,021mm、ボディ長は505mm/497mmです。

ショルダー付近・くびれ部分・最大幅もカタログに記載されていて、FGモデル は292mm×268mm×412mm、FSモデルは279mm×233mm×380mmとなっています。
ステップ2:ナチュラル色なら800~850番の全機種を候補にできる
さて、ステップ1の内容をおさえたら、今度は「FG800とFS800の派生形」を選ぶことになります。
アコースティックギターとして最もオーソドックスなのがナチュラルカラー。実際シリーズの全機種にラインナップされています。
それぞれ少しずつ価格が上がり、「サイドバック(側板・裏板)の木材や装飾に違い」があるので順番に見てみます。
FG820とFS820からはマホガニーボディでバインディングが付く
ヤマハのFG820とFS820の製品写真は下記に掲載。「FS820とFG820の違い」はまずボディ形状でチェックするんでしたね。ボディ中央付近のくびれが強いほうがFS820です。
画像をズームで拡大すると、「ステップ1」で見たFG800とFS800と異なり、ネックの指板(左手で握る部分)にバインディング(縁取り)が付いているんですよね。
細かな部分ですが、入門モデル特有の「安っぽさ」を感じさせないデザインで、少し離れてみたときにも外観のメリハリが出ています。

木材もナトー/オクメ材からマホガニー材にアップグレードされているね。
FG830とFS830はローズウッドボディの上品な音色で装飾も綺麗
続いて下記はヤマハのFG830とFS830というモデル。「FG830とFG820の違いは?」「FS830とFS820の違いは」というのがよくある質問です。
820は前項で紹介しましたが、830シリーズは「ローズウッド材で製作されたボディ」による明瞭で深みのあるサウンドが特筆すべきところ。
この二機種は800番台シリーズの中でも、その「コスパの高さに定評」があって、あちこちの人気ランキングでおすすめされています。
さらにFG830/FS830だと、820シリーズと異なり(指板だけでなく)ギターのヘッド周囲までバインディングが施されているのに気付きましたか?

ボディ本体側で最も目立つサウンドホールの装飾が華やかになっていることも、かっこいいポイントなのでチェックしてみてください。
FG850とFS850はマホガニートップでブラウン系の渋い雰囲気
そして、ステップ2の最後。FG850とFS850だけはボディトップが(スプルース材ではなく)マホガニー材を採用したモデルになっています。
同じ「ナチュラル・フィニッシュ」でもブラウン系の色味なので、すぐに見分けが付きますね。
木のぬくもりを感じさせる「家具のように落ち着いたウッディな雰囲気」が渋い。FG850とFS850は、他モデルよりレトロな佇まいに感じる方もいるかもしれません。
こういった木材の種類は音色面にも影響してくるところで、中低音域のふくよかさが目立つ印象の製品となっています。
FGシェイプのみ「FG840」というフレイムメイプル材で製作された仕様があります。裏板・側板に美しい杢目(もくめ)が入っており、サウンドも明るく硬質な傾向です。※「FS840」という型番はありません。
ステップ3:豊富なカラーから選ぶならFG820とFS820に注目しよう
いよいよステップ3ですが、ここはナチュラル以外のカラーで選びたい場合にご覧ください。自然と候補が絞り込めます。
端的には「ステップ2」でチェックしたFG820/FS820(マホガニーボディ)もしくはFG830/FS830(ローズウッドボディ)が選択肢となってくるでしょう。
ただし、830のバリエーションは「サンバースト」系のグラデーション仕上げ多少増えるくらい。一番カラーの選択肢が多いロングセラー製品はヤマハFG820/FS820モデルです。
「FS820とFS830はどっちがいい?」もしくは「FG820とFG830はどっちがいい?」という質問も頻出で、スペックを見ると830が上位ですが、カラバリに関しては820のほうが豊富。
たとえば「FG820のブラック、サンセットブルー」や、「FS820のブラック、ルビーレッド、ターコイズ」などのカラーオプションが挙げられます。
FG820/FS820には、もともと前身となるモデルがあって、2016年3月にアップデートされた製品。アコギ初心者向けの定番で一向に人気が衰える気配がありません。
品薄になりがちな人気カラーも多いのですが、ボディシェイプが違うと、同系色でもイメージが少し変わってくるので各製品のバリエーションを見比べてみましょう。
まとめ
以上、できるだけシンプルにまとめてみましたが候補は定まってきたでしょうか。
ヤマハFG/FS800~FG/FS850のアコースティックギターは、共通してボディトップに単板(たんばん)の木材を使用しています。

その表板を支えている力木は、スキャロップド・ブレーシングといって、優れた音響特性と耐久性を両立すべくヤマハが独自研究を重ねてきたものです。
「中低域のふくよかさ、きらびやかな倍音成分」が心地良く、演奏者のタッチによる強弱をしっかり反映してくれるのが大きな魅力です。

ネック接合部やブリッジ形状も、YAMAHAで培われた長年のノウハウが活きているところ。
同価格帯のアコギで比較したときの「弾きやすさ」はもちろん、「このくらい反応が良いギターだと上達も早いのでは?」というのが各方面で高評価を獲得している理由のひとつでしょう。
今回ご紹介したモデルごとの音色の違いは、「ヤマハの楽譜出版」公式Youtubeチャンネル下記動画で聞き比べできます。
「ギター本体だけでなく、アクセサリーもセットで準備しなくちゃ…」という方向けには下記で解説してあります。
以上、最後までご覧いただきありがとうございました!