「これからアコギをはじめる初心者であれば、とりあえずヤマハの機種を選んでおくのが無難だよ」
ギター経験者からそのようなアドバイスをもらって、このページにたどり着いた人も多いでしょうか。
でも「YAMAHAは世界的に有名なブランドだし、入門モデルでも安くはないのでは?」「さすがに税込2万円~3万円台の予算で探すのは厳しいよね?」と思いませんか?
ヤマハのミニギターとかギタレレなら見つかるけど、普通のサイズのアコギではどうだろう…
じつはモデルの存在が見落としがちなんですが、いわばカタログ外モデル的な位置付け、少しだけマイナーなラインナップとして存在しているんですよね。
本記事では私自身の楽器店勤務経験をもとに、税込予算3万円以内で選べるヤマハのアコギ(フォークギター)について解説していきます。
新品のアクセサリーセット付きで2万円台ということなので、ギター単品や最低限のシンプルなセットであれば1万円台で購入できるモデル(本記事更新時点)も含まれています。
以下で各製品のご紹介をしていくので参考にしてみてください。
2万円台のアコギ初心者セットがヤマハに4種類もある!
通常はヤマハで配布されている紙媒体のカタログ冊子に掲載がないのですが、2万円台のアコギ初心者セットには4種類の型番が存在しています。
それぞれ「大手楽器店のショップオリジナルモデル、もしくは数量限定生産の入門モデル」の扱いとなっているのが特徴で、下表の製品ラインナップです。
モデル別の仕様 | F600 | F315D | F310P | F620 |
ボディ形状 | FGシェイプ | FGシェイプ | FGシェイプ | FGシェイプ |
ボディトップの木材 | スプルース | スプルース | スプルース | スプルース |
サイドバックの木材 | メランティ | メランティ | メランティ | ナトー |
ネックの木材 | ナトー | ナトー | ナトー | ナトー |
弦長 | 634mm | 634mm | 634mm | 634mm |
ナット幅 | 43mm | 43mm | 43mm | 43mm |
指板の木材 | ローズウッド | ローズウッド | ローズウッド | ローズウッド |
ピックガードの種類 | べっこう柄 | ブラック | ブラック | べっこう柄 |
ペグの種類 | クローム | ゴールド | クローム | クローム |
カラー | NAT | NAT、TBS | NAT、TBS | NAT |
ここでよく聞かれる質問としては、型番が似ている「ヤマハF600とF620の違い」についてですが、前者が島村楽器限定取り扱いモデル、後者がヤマハから不定期リリースされる数量限定生産モデルとなっています。
4製品いずれもヤマハが「トラッドウエスタン」と呼んでいるFGシェイプのボディ形状がもとになっており、分類としては「ドレッドノートタイプ」に近いオーソドックスなスタイルですね。
次項からモデルごとにもう少し細かく見ていきますが、各種製品で共通しているところは、ネックの長さを634mmスケールにしていること。
現行FGタイプでスタンダードな650mmスケールより短く、アコギ初心者でも「弦が楽に押さえられて弾きやすい」ように配慮してあります。
モデル/カラーによって品薄が長引くことも多いので、特定の型番が欠品している場合に、このグループ内で代替機種を探してみるという選び方もおすすめです。
ヤマハの前身となる「日本楽器製造」は1897年に設立。
ピアノや管楽器の印象が強いかもしれませんが、「世界最大級の音響機器・楽器メーカー」としてフォークギターの分野でも1960年代中頃から業界を牽引し続けてきました。
F600は島村楽器によるオンラインストア限定モデル
まず、ヤマハF600モデルについては島村楽器のオンラインストア以外では買えない製品です。
島村楽器は全国各地に多数の直営店舗がありますが、本製品はあくまでネット通販限定モデル。
とはいえ、もし自宅の近くに系列店舗がある方でしたら、安心感が違ってくるのではないでしょうか。
今回の記事で取り上げているヤマハ製品に共通の仕様で、ボディトップの木材はスプルースというマツ科の針葉樹が用いられています。
響振性に優れているのでギターだけに留まらず、伝統的に様々な楽器に用いられてきたんだよ。
F600はスプルース材の雰囲気を活かしたナチュラルカラー仕上げと、べっこう柄(茶色)のピックガードを組み合わせているのが特徴ですね。
公式デモ動画で、ストローク/アルペジオ奏法別にサウンドを聞けるのでチェックしてみてください。
F315Dはイシバシ楽器とのコラボレーションモデル
続いてヤマハF315Dモデルは、老舗イシバシ楽器によるオリジナルオーダー製品にあたります。
イシバシ楽器も関東・関西を中心に大規模な実店舗が複数ありますが、島村楽器のF600と同様にF315DはWEBSHOPでの販売(ネット通販)がメインの型番です。
ピックガードはブラックで、入門モデルでは珍しい高級感のあるゴールドメッキ・ペグとのコントラストがかっこいいですね。
「ナチュラルとサンバースト」の両色とも、アコギのカラーでは王道のフィニッシュとなっています。定番売れ筋モデルとして定着しているF315Dは、Amazonや楽天市場のレビュー評価も件数が多いので商品リンク先でご覧になってみてください。
ネックの木材は「ナトー(ニャトー)」といって、家具材としても有名なマホガニーに近い特性。
F315Dは、グリップ形状を工夫しているのも石橋楽器店開発担当者のこだわりだそうで、価格が安いだけでなく、手の小さい方のストレスのならないよう最大限配慮しれたスペックで製作されています。
F310Pはその他の一部ショップで販売されている入門パッケージ
次のヤマハF310Pモデルは、特定のショップオリジナルやコラボ製品ではなく「カタログ外の入門機種」というポジションになっています。
ハイフン付きでF-310Pと表記されている場合もありますね。「ナチュラル仕上げ」と「サンバースト仕上げ」(茶色系のグラデーション)が販売されています。
こちらのアコギもギター本体の基本スペックは、先に挙げたショップオリジナル製品に近い内容ですが、F600やF315Dを取り扱っている島村楽器やイシバシ楽器では通常見かけないため他機種より知名度が低いでしょう。
F310は日本だけでなく海外でも販売されているモデルなんだって。
ペグの形状や細かなパーツについては出荷時期によって若干の違いがあり、これまで生産ロットによって仕様がマイナーチェンジされてきました。
型番の「P」がビギナー向けのスターター「パック」であることを示していて、もともとギター単品ではなく「セット販売が前提になっているモデル」です。
取り扱いショップによって「付属品がチューナー(デジタル式チューニングメーター)ではなくピッチパイプ(調子笛)のパッケージ」があるので、注文前にセット内容も含めて見比べるようにしておきましょう。
F620がヤマハ新製品として数量限定生産されるようになった
最後にご紹介するのがヤマハF620モデルで、2022年9月から再登場している数量限定生産のエントリーモデルです。
上述の機種と同様にカタログ冊子への掲載こそないものの、YAMAHAの国内公式サイトには掲載されるようになったのでレギュラーラインナップに近いギターですね。
「ナチュラルカラー・べっこう柄のピックガード」という組み合わせは、先にご紹介した島村楽器限定F600と類似したルックスでありながら「バインディング」というボディの縁取り部分が白いのが特徴。
楽器の鳴りを妨げないように塗装の薄さにも配慮して製作されているよ。
限定復刻・再販されるたびに、ギター初心者の評判、楽器店員の評価ともに安定しています。
スポットモデルとしてすっかり恒例となったモデルで2022年9月の前は、2021年12月の発表でした。
他機種はボディのサイドバック材がメランティという木材(ラワン系)であるのに対して、F620モデルではネック材とサイドバック材の両方がともにナトーになっています。
3万円台中盤で候補が2機種増える(FG800とFS800)
ちなみに、もう少しだけ予算を捻出できるのであればロングセラーのFG800モデルやFS800モデルも選択肢に入るところです。
「今まで見てきたFシリーズとの違い」「コスパの良さ」から注目したいのは、トップ単板(たんばん)でスキャロップド・ブレイシングにアップグレードされている部分。
専門用語抜きで解説すると、弦振動のレスポンスが良く、生音の響きが豊かに鳴るように設計されているということだね。
特にFS800のほうは冒頭でリストアップした4製品よりボディサイズが小ぶりなアコギなので、小柄な体格の方に有力な比較候補になると思います。
FG800については、ネックのスケール(弦長)が650mmとサウンドにメリハリがある分、弦のテンション(押さえるときの硬さ)も少し強くなるので注意しましょう。
他にも「FGやFSの800番台」には、レビューや口コミの評判も高いおすすめ機種が多いので、ぜひ下記ページを参考に予習してみてください。
まとめ、新製品FX370Cも話題を呼んでいる
こういった低価格帯のギターについての話は「安かろう、悪かろうじゃないの?」と思われがちかもしれません。
たしかに上位機種を見たらキリがないのですが、世界のヤマハというブランドを冠している以上、メーカーとしては安い価格帯のモデルでも、あまりネガティブな評価にならない品質を維持する必要がありますよね。
学校の音楽室や軽音の部室、サークル棟などで、ヤマハのギターを見たことがありませんか?
海外拠点の生産で価格を抑えながらも、初心者のニーズにしっかり応える評価を目指してデザインされています。
予算2万円~3万円のアコギ初心者セットを探しているというときには、F600、F315D、F310P、F620といったモデルを選択肢に入れてみてください。
あとは2023年10月に発売されたばかりの新製品のFX370C。こちらのエレアコ(マイク搭載)に関してもコスパの高さで話題を呼んでいるので比較検討するモデル候補としておすすめしておきます。
最後までご覧いただきありがとうございました。