「ギブソン直系でお手頃なモデルならエピフォン製品を探す」のは順当な選び方なのですが、この数年で「安いモデル」はずいぶん減っています。
特にレスポールを選ぼうとすると「意外と安い機種が少ないこと」に気付くのではないのでしょうか。
レスポールモデルはエレキギターの種類のなかでも製作工程に手間のかかる設計上、どうしてもコストを抑えるのに限界があるんですよね。
きれいな杢目のフレイムメイプル材をラミネイトしていたり、ヘッドに角度の付いたセットネック構造だったりするもんね。
たとえば、長年レスポールがトレードマークとなっているSlashのアーティストモデルでEpiphone版のLes Paul Standard November Burstを見てみましょう。
このあたりはエピフォンを代表する機種といえ、ギター初心者の方だと少し躊躇してしまう価格帯かもしれません。
最近は「ぼっち・ざ・ろっく」で後藤ひとりちゃん(ぼっちちゃん)が弾いているギブソン・レスポールカスタムも一気に有名になりました。
レスポールカスタムは、レスポールスタンダードと違い、ポジションマークのデザインやゴールドハードウェア等に特徴がある上位機種。
仮にエピフォン版にしても10万円前後なので、相応の金策が必要なお値段ですね。
そういった背景をふまえたうえで、本記事ではもう少しリーズナブルなモデルに焦点を当てていきます。
(入荷時期による幅はありますが)2023年7月19日時点の新品実売価格で、税込予算5万円前後を目安に選べるレスポールの種類として比較解説してみました。
品薄な製品に関してはプレミアム価格で販売しているショップも見かけるので、信頼できる楽器店の出品なのかは必ず確認するようにしましょう。
ギター初心者~中級者の方が選びやすい価格帯のレスポールとして、以下参考にしてみてください。
【2023年版】エピフォン・レスポール・スタンダード系の種類と特徴
型番が「LesPaul Standard」になっているモデルは、2020年からギブソンカスタムショップとのコラボレーションで限定発売された「1959年モデル」の他に、「50sモデル」や「60sモデル」がラインナップされています。
2020年にエピフォンのラインナップがリニューアルされる以前の旧製品にあてはめると「Epiphone Les Paul Standard Plus Top」シリーズの後継機種にあたります。
ただ、それらはトラ杢(フィギュアドメイプル、フレイムメイプル)のトップ材を採用した仕様で今回設定した税込5万円台という予算から結構オーバーしてしまうんです。
ここでコストパフォーマンスを重視すると、レスポールクラシックやレスポールスタジオが有力候補になってきます。
それぞれの製品ごとの違いや特徴について、以下でなるべく分かりやすく整理してみたので参考にしてみてください。
レスポールクラシック・ウォーンはマット塗装でコストを削減
まず、注目したいレスポールクラシックは2020年から再編された「モダンレスポール・コレクション」の分類に入っています。
トラ杢の出ていないオーソドックスな「プレーンメイプルトップ」仕様ですね。
その中で特に型番に「Worn」と表記されている製品は「ヘリテイジチェリーサンバースト、エボニーブラック、メタリックゴールド、パープル」の4色全てが艶消し塗装。
無印のクラシックより「光沢を出す工程を簡易化することで値段を抑えているモデル」で、うっすらと導管の凹凸が分かるくらいの質感がかっこいいと思います。
スリムネックでピックアップカバーが付いていないところは、LesPaul Classic歴代ほぼ共通の特徴だよ。
本製品に採用されたピックアップ(マイク)は、「アルニコクラシックプロ・ハムバッカー」という名称。
ボリュームノブを引き上げるとコイルスプリットが有効になるため、「出力を少し押さえたい」「抜けの良いカッティングサウンドを出したい」ときにも活躍してくれる配線となっています。
現行モデルではエピフォン旧製品と違い「ギブソン本家のヘッドデザインに寄せたフォルム」にアップデートされました。
ギア比18:1の「キドニーボタン・グローバーロトマチックペグ」によって、チューニングの精度やサスティーン(音の伸びやかさ)に優れているのも魅力といえるでしょう。
レスポールスタジオはギターの装飾を簡素化したロングセラー機種
2020年以降にリニューアルされたレスポールスタジオも「レスポールクラシック・ウォーンフィニッシュ」とほぼ同等の価格帯グレードです。
Les Paul Studioがギブソンで最初に発売されたのは1983年。装飾を省いてコスパを重視しているため「スタジオ録音用機材として最適なこと」が型番の由来だと言われています。
ギターの画像をよく見ると、ボディやネックを装飾する縁取り(バインディング)が省略されています。
そのバインディングを巻くプロセスは手作業が必要なので、工数を減らしたぶんお手頃な価格に反映、高評価されているイメージですね。
レスポールスタジオの最新版では、王道路線のサウンドを狙った「アルニコクラシック・ハムバッカーピックアップ」を搭載。
手が小さい人でも弾きやすいスリムテーパー形状のネックグリップで製作されているよ。
「ワインレッド、アルパインホワイト、エボニーブラック」は定番色でしたが、現在は「スモークハウスバースト」という焦げ茶の新色も加わるようになりました。
レスポールスタジオLTはボルトオン構造を採用したヒールレス仕様
続いてレスポールスタジオのLTモデルは、さらにぐっと値段が抑えられたモデルとなっています。
レスポールスタジオLTに関しては、先日までカタログ掲載がなかった製品ですが、直近で「Les Paul Studio E1」という表記でラインナップされるようになった注目機種です。
ボディ本体とネックをボンドではなくネジで接合する「ボルトオンジョイント」によって生産体制の効率化を図っているのが際立ったポイント。
さらに、そのジョイント部分をよく見てみると、とても滑らかに成形されたヒールレス加工が施されています。
レスポールの弱点と言われるハイポジションまで、運指がしやすいメリットがあるね。
公式サイトにカラーバリエーションの掲載がありますが、いずれもシンプルなドットポジションマークをあしらったスリムシェイプのネックで製作されています。
従来のカラーオプションは「ウォルナット、エボニーブラック、ヴィンテージサンバースト、ヘリテイジチェリーサンバースト」といったスタンダードな展開。
本製品の場合、アーチ状に削り出されたボディトップは典型的なメイプル材と異なり、マホガニー材によるもので若干薄めになっていることも特徴に挙げられるでしょう。
ゼブラボビン(白黒)のピックアップは、セラミックマグネット仕様でパワー感のあるサウンドを奏でてくれるのが好評です。
少し小さめのパワープレイヤーズ・レスポールが2022年夏から発売
それから2022年7月に発売されたパワープレイヤーズ・レスポ―ル(パワープレイヤー・レスポール)についてもご紹介しておきましょう。
こちらのモデルは「赤系、黒系、青系」の三色展開で最たる特徴は7/8スケールを採用していること。レスポールスタジオLTのようにネックジョイントもボルトオンジョイントタイプですね。
いきなり「8分の7」と言われてもピンとこないかもしれないですが、これは厳密な縮尺ではないので「3/4+」と表記されていることもあります。大体の目安として考えていただければと思います。
普通ギブソンやエピフォンのレスポールは24.75インチ・スケールという弦長が標準です。それが本機種の設計では22.73インチ・スケール。
「インチ」だとまだ感覚が掴めないかもしれないですね。まず公式動画をご覧いただいたうえで、
センチで表記すると、レギュラーサイズが約628.65cmなのに対して約577.34cmまでサイズダウン。約5.1cmの違いで「ミニギターの中では少し大きめ」くらいのニュアンスが近いでしょうか。
1インチをセンチに換算するときは約2.54cmで計算することが多いよ。
ただ長さが短いだけでなく、ボディも小ぶりになっていて、ブリッジ周りまでシンプルな構造ですね。当然軽量になっているのですが、それでもレスポールらしい雰囲気はしっかり残っているのが嬉しいところ。
【2023年版】エピフォン・フラットトップ・レスポール系の種類と特徴
以下ではもう少し趣向の違うレスポールモデルを見ていきます。レスポールの中でもボディ表側がほぼ平面になっている「フラットトップ設計」のエレキギターです。
レスポールジュニアやレスポールスペシャルが代表的なモデル名で、ギブソン本家でも伝統的に価格設定が抑えられた種類となっています。
「レスポールスタンダード」と比較して軽量な個体も多く、ギター初心者の方に打ってつけのバリエーションといえるでしょう。
レスポールジュニアは50年代の入門機種を踏襲した素朴なデザイン
まず、2020年から「オリジナルレスポール・コレクション」に追加されたレスポールジュニアを見てみましょう。
「伝統的なセットネック構造」を踏襲しつつ、ボディ材を切り出した状態から最低限の面取りで製作できるミニマムなデザインです。
ブリッジの種類はサドルとテイルピースが一体になった「ライトニングバー・ラップアラウンドタイプ」と呼ばれる仕様。
1950年代のネックシェイプを再現した比較的厚みのある握りでありながら、不自然に角ばった感じを残さない「ロールド処理」が施されているのが魅力ですね。
電装系も極力シンプルで、ピックアップはドッグイヤータイプP-90を一基搭載したのみ。
オールド同様にペグのつまみが丸くて、サンバーストとの組み合わせがレトロな印象だね。
決して器用なキャラクターのギターではないですが、レスポールジュニアならではの潔いサウンドが病み付きになってしまいます。
レスポールスペシャルのシングルカット・TVイエローが待望の復刻
続いてファン待望の復刻となったエピフォン版のレスポールスペシャルをご紹介します。
こちらも「オリジナルレスポール・コレクション」のシリーズに属しており、レスポールジュニアの2ピックアップバージョンです。
1弦側のみにカッタウェイが付いた1957年以前の仕様をモチーフにしたTVイエローフィニッシュが色鮮やかですね。
「レスポールジュニア」とはピックガードのデザインにも違いがあるよ。
ネックグリップはレスポールJr.と異なりサイドバインディング(白い縁取り)が付いていますが、形状自体はこちらも50年代を踏襲したヴィンテージスペック。
慣れるまでは少し厚めの握り心地でしんどく感じるかもしれませんが、そのぶん粘りのある音色が非常に心地良い仕上がりとなっています。
レスポールスペシャルVEは薄胴・軽量ボディを採用したお手頃価格
そして、さらなる廉価版としては、ロングセラーのレスポールスペシャルVEが挙げられます。
2016年の発売なので現在はカタログ外扱いのモデル。製品名の「VE」は「ヴィンテージエディション」の略称です。
ギター初心者の方でも弾きやすいスリムネックのボルトオンジョイント構造で、薄胴・軽量のポプラボディに艶消し塗装を施した設計となっていますね。
本製品も型番は「レスポールスペシャル」でありながら、P-90ピックアップよりパワフルな出力のハムバッカータイプを搭載しているのが特徴です。
1ボリューム・1トーンと必要最低限の操作系統で、ピックアップ・セレクターの配置も邪魔にならないように考慮されているね。
もともと「ウォルナット、ヴィンテージサンバースト、ヘリテイジチェリーサンバースト、エボニーブラック、チェリー」といったカラーが選べましたが、最近は品薄が続いているのでご注意ください。
レスポールSL(メロディメイカー)はポップな配色が映えるエントリー機種
最後にとりわけ異彩を放っているのがこちらの一本を取り上げましょう。2018年から発売されているエントリーモデルのレスポールSLです。
上述のレスポールVEと比較しても、さらに一段と安い価格設定といえるでしょう。
ギブソンには「Melody Maker(メロディメイカー)」という入門機種があり、それを現代的にアレンジしたような雰囲気を感じます。
実際、最新カタログでは「Les Paul SL → Les Paul Melody Maker E1」という表記になりました。
「薄型ボディ・ボルトオンジョイント」であることに加えて、電装系は全てピックガード上に配置して最大限のコストダウンを図っていますね。
パステル系のポップなカラーリング、部屋にインテリアとして置いてあるだけでも映えそうだね。
とてもカジュアルな印象を受けるエレキギターですが、意外と味のあるサウンドになっているのが公式デモ動画でも確認できます。
まとめ:Epiphone正規品は無期限のメーカー保証が嬉しい
レスポールはエピフォンの主力製品。現時点の公式サイトに掲載されているだけで色違い含め60種類以上のバリエーションがあります。
さすがに仕様の違い、評判やレビューの下調べをするだけでも大変なボリュームだと思うので、本記事では「予算を抑えながら選べるおすすめモデルを8機種」に絞ってみました。
ギブソンやエピフォンの正規品ファーストオーナーには、材料や製造工程上の不具合について、永年のサポートが付いています。
そのアフターケアを受けるためには「最初にユーザー登録が必要」なので忘れないようにしましょう。
「ギター初心者セット」のようにアクセサリーについて予習しておきたい方は、別記事で解説しているので参考にしてみてください。
以上、最後までご覧いただきありがとうございました。