エレキギター弦もアコースティックギター弦も消耗品だというのは、ギター歴を問わずご存知の方が多いでしょう。
ただ、初心者の方が「交換弦・替え弦の選び方」を分からず戸惑ってしまうのもよく聞く話。
最近は物価や為替の影響でギター弦の価格が高くなっているため、なおさら失敗したくないですよね。
本記事で弦交換の準備をする際に楽器店勤務中によく聞かれた質問、ギター弦を選ぶときの基礎知識について、極力分かりやすく解説していこうと思います。
なんで定期的にギター弦を張り替える必要があるの?
ときに「NO STRINGS, NO LIFE.」とまで言われたりしますが、弦が切れたら楽器を弾けないので当然「交換しなくては」と思いますよね。
でも、じつは弦が切れていない状態でも定期的に弦交換が必要だとご存知でしたか?
その理由はシンプルに書くと下記のとおり。
- 古い弦だとフレットに傷が付きやすいから
- 古い弦だと演奏の音程が悪くなりやすいから
困ったことに、サビた弦は接触するフレット(指板上の金属)が痛みやすく、偏った摩耗につながります。
そして、古い弦をそのまま使い続けると「フレットすり合わせ・交換」が必要な時期が早まる可能性が高まります。
フレット周りのメンテナンスは専門のリペアマンに頼む必要がありますし、費用も相応にかかるので注意が必要。
弦が劣化するとチューニングがずれやすく、ピッチ(音程)が不安定になってくることもあり、練習用のギターだからといって古い弦を使い続けるのはおすすめできません。
「だんだん出音に元気がなくなる」「サスティーン(音の伸び)が落ちる」という理由もあるよね。
ギター弦を交換するタイミングや頻度は普通どれくらい?
弦交換の時期は人によってアドバイス内容が異なるので何かと物議をかもします。
「ギター弦を交換するタイミングは?」と尋ねたときの回答はギタリストによって「数日、数週間、数カ月」と本当に三者三様です。
これは普段の練習頻度や、手汗の量・体質、弦の種類、保管環境によって劣化具合が全く違ってくるもの。
ギター初心者の方だと、弦が切れてはじめて「張り替え・交換」について調べはじめるかもしれませんね。
ここでは目安として、ギターを購入して一カ月くらい経っているなら交換にトライしてみることを提案してみます。
バラ弦はあくまで臨時的な用途。基本的には6弦セットで交換しよう。
なお、ギターの弦交換を行う際に楽器店やリペアショップに依頼する必要はありません。
もちろん初挑戦に躊躇する気持ちはごもっともですが、「替え弦」以外に必要な道具は「金属が切れるニッパー」さえ用意すれば大丈夫。
「弦はいつ切れるか分からない」ので、むしろ自分一人で交換できるようにしておきましょう。
最初は時間がかかりますが、弦交換もギター練習の一環で、繰り返しているうちに簡単に張り替えできるようになります。
色々なメーカーの弦を試してみると、自然と音色の変化にも気付きやすくなってくるはずです。
張り替え方はもとの状態を参考に直感でできてしまう人もいると思いますが、Youtubeで丁寧な解説が見つかりますし、大半の教則本(上記参考)に載っているのでチェックしてみましょう。
ギター弦の種類と選び方はどうやって決めればいいの?
さて、ここからギター弦の種類と選び方に焦点をあてて解説していきましょう。
「エレキ弦、アコギ弦」というおおざっぱな分類だけでなく、ギター本体のメーカー・型番ごとに弦の種類を考えることが必要です。
特に「替え弦の太さ(ストリングスゲージ)」を変更すると、ギター各部のパーツで「ネックの反り、オクターブピッチ、ナット溝幅など」を調整しなくてはならない可能性が高くなります。
簡単なメンテナンスが自分でできるようになってきたら、ぜひ色々な種類の弦を試してもらいたいのですが、最初のうちはギター出荷時の仕様から変更しないのがスムーズです。
「弦が太いほうがサウンドはパワフル、弦が細いほうが弾きやすい」と言われるよね。
以下のステップで、弦の太さを調べて、近い太さの替え弦を入手するようにしましょう。
現在張ってある弦のストリングス・ゲージ(太さ)を調べる方法
同じ種類の弦であっても「交換タイミングでギターのセッティングを調整するに越したことはない」ですが、それに悩んで弦交換が億劫になってしまっては本末転倒。
ビギナーさんであればストリングス・ゲージ(弦の太さ)を変更しなければ許容範囲と考えておきます。
「ギター出荷時に張ってある弦の太さ」「ギターのモデルごとの推奨ゲージ」については、WEBサイトやカタログで「ギター本体の機種名」からたどって調べてみましょう。
たいていは製品仕様(スペック欄)の下の方まで見てみると「弦メーカー・品番」の記載や「Strings Gauge」といった項目が出てくることが多いです。
また、あくまで一例ですが、
- ストラトやテレキャスターなどのロングスケール:.009-.042など
- レスポールやSGなどのミディアムスケール:.010-.046など
- レギュラーサイズのアコースティックギター:.012-.052や.012-.053など
初心者セットや入門モデルのギターでは、上記に近いゲージが使われている傾向があります。
なかなか見当が付かないときは、一手間かけて楽器を購入した店舗に問い合わせをすれば教えてくれるでしょう。
市販弦のパッケージからストリングス・ゲージ(太さ)を読む方法
つづいて市販されているギター弦を選ぶ際の手順ですね。
パッケージの表裏どちらかに「インチ表記」で弦の太さが記載されている箇所があるので、その数字を確認しましょう。
特にポイントとなる一番細い1弦(高音弦)と一番太い6弦(低音弦)の数字に着目して、先ほど調べた自分の楽器「現状の弦」と同じ太さなのかをチェックします。
慣用的に「ライトゲージ」「レギュラーゲージ」といった呼び方もありますが、メーカーによって幅がある言い回しなので、あくまでパッケージの数字で見るのがおすすめです。
数字は下二桁を見て「ゼロキューヨンニー」「イチゼロヨンロク」「イチニーゴーニー」といった具合に読むよ。
覚えておきたい予備知識:ギター弦の素材や専門用語の説明
ここまででギターの弦交換について段取りは掴めたでしょうか。
あとは、いざギター弦を選びはじめると、楽器店のアクセサリー売り場で壁一面を埋め尽くすほどの種類があることに気付かされます。
実際にパッケージを手に取って見比べていると、ビギナーの方には聞き慣れない専門用語、素材名が続出するはずです。
掘り下げると、かなりのボリュームになってしまうので「弦の特徴や違いを知るための基礎知識」に留めて以下で簡潔に解説しておきましょう。
ギザギザなのがワウンド弦でツルツルなのがプレーン弦
ギター弦では低音側の太くギザギザした弦をワウンド弦(巻弦)、高音側の細くツルツルした弦をプレーン弦と呼びます。
3弦(G弦)に関しては「アコギ用だとワウンド弦、エレキ用だとプレーン弦」になっているのが一般的です。
最初のうちは、6~4弦もしくは6~3弦側がワウンド仕様で、3~2弦もしくは2~1弦がプレーン仕様になっているという知識があれば十分。
ワウンド弦、プレーン弦それぞれ「メッキの種類や組成、スチール芯線の形状など」が製品ごとに異なっています。
エレキギター弦の種類ではニッケルメッキを選んでおくのが定番
これは上述したワウンド弦の「巻き線部分の話」になりますが、エレキギター弦はニッケル合金メッキ(Nickel-Plated)が施されているのが定番です。
ニッケル合金の種類を変えたものや、ステンレス素材を採用した製品もありますが、エレキギター初心者の方が迷ったら、スタンダードなのはニッケル弦だと覚えておけば大丈夫です。
おおむねステンレスのほうが錆びにくくて硬めのサウンドになりやすいよ。
アコギ弦はブロンズ弦とフォスファーブロンズ弦どちらでも大丈夫
アコースティックギター(フォークギター)の低音弦でも「巻き線」に注目してみましょう。
弦が黄色いのがブロンズ弦、赤味のある褐色がかったのがフォスファーブロンズ弦というバリエーションがあります。
はじめての弦交換であれば、ひとまずどちらを選んでもOK。
「ブロンズ」という呼称は本来誤用に近く、実質は「ブラス」なのですが、銅(Copper)80%と亜鉛(Zinc)20%に準じる配合で「80/20ブロンズ」と表記されるものがポピュラー。
その一方で「フォスファーブロンズ」は、銅にスズ(Tin)と少量のリン(Phosphorous)を含んだ合金で管楽器やドラムにも使用されています。
日本だとフォスファー弦の方がブライトなサウンドと表現されることが多いですが、これは欧米だと反対の解釈だったりするので気になる方は上記の記事を参考にしてみてください。
張り替えてからの経過時間、アコギのボディサイズ・鳴り方の特性、演奏スタイルでも印象が変わってくるよ。
ラウンドワウンド弦が標準で、フラットワウンド弦は少し特殊仕様
こちらも同様に「巻弦側の種類」のことですが、ポピュラーなのはエレキギターもアコースティックギターもラウンドワウンド仕様となっています。
「フラットワウンド仕様」は、その名の通り「巻き線が平らでスベスベ」しているんですよね。マイルドなアタック音を重視する「ジャズギター」などに使われることがほとんど。
同じゲージでも非常に大きな違いとなるので、ラウンド弦とフラット弦で間違えて注文しないようにくれぐれも気を付けましょう。
すっかり人気が定着したコーティング弦、コンパウンド弦という選択肢も
コーティング弦(コーテッド弦)は、エレキギター用もアコースティックギター用もありますが、弦を長持ちさせるために特殊な被膜を施したものです。
以前は「コーテッド弦=エリクサー」のイメージが強かったですが、近年ではダダリオなど他のメーカーも多く参入しています。
触った時の質感や音色は非コーティング弦と若干異なりますが、最近は通常の弦と違和感がないように工夫されているものが増えてた印象です。
やや価格が高い分、「弦交換に失敗してしまったときにショックが大きい」ので、一番最初は非コーティング弦でいいかもしれませんね。
その他、少数派ではありますが、アコギ用にはSilk and Steel、コンパウンド弦という選択肢もあります。
「スティール弦とナイロン弦の中間的な弾き心地、柔らかいまろやかな音色」と表現されたりします。
ひとまず最初は「そういう種類が販売されていること」さえ知っていれば十分でしょう。
まとめ:迷ったらダダリオ、アーニーボール、マーチン、エリクサーがおすすめ
以上の基礎知識を身に付けておけばギター弦の選び方で困らないのではないでしょうか。
Amazonにはギター弦の売れ筋ランキングがあって自動更新されています。エレキギターの場合、全国各地の楽器店で手に入りやすいダダリオ(D’Addario)、アーニーボール(Ernie Ball)は非常に無難な選択肢。
最初からあまり買いだめしてしまうと劣化や好みが変わったときのリスクがありますが、「交換作業の失敗に備えて3セットパックなどにしておくと安心」でしょう。
アコギに関しては、マーチン弦が王道でしたが、近年はエリクサー(Elixir)のナノウェブ・シリーズが長寿命で人気ランキング上位の常連になっています。
エリクサーに関しては、エレキギターだとエリクサー・オプティウェブが人気上昇中ですね。
最後までご覧いただきありがとうございました。