フェンダー・ムスタングはヴィンテージや他社コピー製品を除くと、「フェンダージャパンで数種類ラインナップされているだけ」の時代が長く続いてきました。
ようやくフェンダーカスタムショップ、フェンダーUSA、フェンダーメキシコ、スクワイヤーなどでムスタング製品が増え始めたのは2010年代中盤に入ってからのこと。

とても嬉しいことですが、「どのモデルが定番なのか、どういう違いがあるのか」迷ってしまうシチュエーションも増えました。
本記事ではFender/SquierのMustang現行モデル全機種の特徴や違いについて楽器店員視点で解説してみました。

ムスタングの初出は1964年。コンパクトなボディシェイプと24インチ・ショートスケールのエレキギターで気軽に演奏できるのが人気だね。
現代仕様:ハードテイル版のムスタングは扱いやすさ重視
まずは「ハードテイル・ブリッジのムスタング」から見ていきましょう。初心者向けモデルや、モダン仕様の機種によく採用されているタイプです。
Fender Mustangといえば、この画像に写っている「ダイナミックトレモロ」というブリッジ(ヴィブラート機構)が大きな特徴でした。
しかしながら、その特徴的なパーツをあえて固定式にした「ハードテイル仕様」の人気が高まっています。
一見すると「ストラトキャスターのブリッジ」に似ていますが、アームを入れる穴や背面キャビティ(四角いザグリ加工)がない設計ですね。

当然、アームで音程を変化させる奏法(アーミング)ができなくなってしまうことはデメリット。
しかし、チューニングやセットアップの手間が省けるうえに、手頃な価格帯のモデルが多い点は大きな魅力です。

「ミュージックマスター」や「デュオソニック」のような兄弟姉妹モデルにも近いスペックだね。

以下、具体的な製品を順番にご紹介していきます。
スクワイヤーのソニック・ムスタングがギター初心者にすごく売れている
まずはフェンダー直系の低価格帯ブランドであるスクワイヤー(スクワイア)製品が売れ筋ですね。
2023年6月に発売されたソニック・ムスタングは、エントリーモデルとして好評だったバレット・ムスタングの後継機種にあたります。
価格帯的にチープなサウンドを想像するかもしれませんが、小ぶりでかわいらしい見た目に反して、なかなかラウドに鳴ってくれるサウンドが魅力。
主にインドネシア工場で生産されており、型番に「HH」とつくハムバッカー搭載モデルと、「HH」がつかないシングルコイル搭載モデルの2種類が用意されています。
2017年に発売されたBullet Mustangと同様に、ソニック・ムスタングでもボディには軽量なポプラ材を採用。
ただし、旧バレットシリーズ(画像)とは異なりフラットで伝統的なボディデザインに近くなっていますね。

発売当初のラインナップはシングルコイルモデルに「2カラーサンバーストとトリノレッド」、ハムバッカーモデルに「カリフォルニアブルーとフラッシュピンク」でした。
その後、2026年4月にはダフネブルー(シングルコイルモデル)、ブラック(ハムバッカーモデル)が新色に追加されています。

ギター初心者向けにアクセサリーセット付きで販売しているショップもあるよ。
プレイヤーIIムスタングが現行ラインナップの基準となる代表機種
続いてはメキシコにあるフェンダー・エンセナダ工場製のムスタングモデルです。
この「プレイヤーシリーズ」にはムスタング以外の機種も数多くラインナップされており、現在のフェンダーにおいて標準的なグレードと言えます。
プレイヤーIIムスタングはオーソドックスなシングルコイルピックアップ構成で、ボディはアルダー材で製作された仕様ですね。
もともと2016年夏にリリースされた「オフセットシリーズ」が2020年以降は「プレイヤーシリーズ」に編入。その後、2024年7月に発表された「プレイヤー2シリーズ」としてアップデートされた経緯があります。
Player II Mustangのネックはグリップ感を向上させる目的で、指板サイド部分のエッジをわずかに「ロールオフ」されている特徴があります。

ヘッドロゴやペグもプレイヤーシリーズからはアップデートされたよ。
先に紹介したソニック・ムスタングと同様にピックアップ・セレクターが3wayスイッチになっている点は、初代プレイヤーシリーズ同様に操作性を重視したアレンジといえます。
アルニコ5マグネットのピックアップで、バランスの良いクリアーなサウンドですね。
「ブラックと3カラーサンバースト」「アクアトーンブルー、バーチグリーン、ハイアリアイエロー」でピックガードとピックアップカバーの色の組み合わせが異なります。2026年6月には新色「カクタスグレー」が追加されました。
王道仕様:ダイナミックトレモロ版のムスタングはヴィンテージ志向
ここからは「ダイナミックトレモロがあってこそのムスタングだ」という王道路線・ヴィンテージ志向の方に向けての内容です。
「Mustang」には「小型の野生馬」という語義がありますが、「ダイナミックな効き方をするアーミング・ヴィブラート機構」は特にジャジャ馬な使い勝手を感じるかもしれません。

ダイナミックトレモロ搭載機種は、コントロールもフェイズが切り替えできるスライドスイッチ式になっており、とことん「ムスタングらしさ」を重視したカテゴリといえるでしょう。
クラシックバイブ60ムスタングはスクワイヤー上位の正統派モデル
Classic Vibeシリーズはスクワイヤー(スクワイア)製品の上位ラインで、リーズナブルな価格でオーセンティックな仕様を実現しています。
具体的には2019年に再編された「クラシックヴァイブシリーズ」にラインナップされているムスタングが下記。
カラーオプションは、若干イエローの色味を帯びた「ヴィンテージホワイト」と淡い「ソニックブルー」の二色です。
いずれもべっ甲柄ピックガードを搭載しており、以前の仕様と比べてトーンを落とした渋い色味になっていますね。

Squier Vintage Modified Mustangは生産完了で、ボディ材・ブリッジサドル・ピックガード・ペグの種類などが異なっているよ。
ネックの塗装は、わずかに飴色がかったヴィンテージ調の質感なので雰囲気があります。
ポプラ材のボディで、ピックアップは「アルニコマグネットのフェンダーデザイン」が搭載されたコスパ良好のムスタングとなりました。
トラディショナル60sムスタングが旧フェンダージャパンの系譜にある王道
Made in Japan Traditionalシリーズは、旧フェンダージャパンの系譜にある日本製モデルとして「60sムスタング」が生産されています。
2017年の発売当初、指板の湾曲は7.25インチRでしたが、2020年のアップデートで少しフラットな9.5インチRに変更されました。これにより、弦高を低くセッティングしても音詰まりしにくくなっています。
現行機種は、バスウッドボディとメイプルネックの形状がUSA製の採寸データに基づいて設計し直されている点も魅力です。従来の60sモデルよりナット幅もわずかにスリムになりました。
ピックガードは「ダフネブルー」だとパーロイドで、「オリンピックホワイト」だとべっ甲柄。そして、この角ばったプラスチックボタンのf-keyチューナーにこだわる方は多いでしょう。

直近のレギュラーカラーはオリンピックホワイトのみ。ときどき限定カラーがスポット生産されているよ。
スペック面での違いはありますが、「フェンダージャパン時代のMG65、Japan Exclusive時代のClassic 60s Mustang」に相当するモデルを現時点でお探しなら本製品が候補となります。
トラディショナル70sムスタングに一世を風靡したマッチングヘッドが復刻
Made in Japan Traditionalシリーズにはもう一つのバリエーションとして、2025年3月発売の「トラディショナル70sムスタング」がラインナップされています。
先述の60sモデルとはボディ形状が異なり、ストラトキャスターのようにボディ表裏へ滑らかな傾斜が施されているのが特徴です。
エルボーコンター/バックコンターが付いている1969年以降の個体をモチーフとしており、ペグにはホワイトボタンのf-keyチューナーが採用されました。
ボディとヘッドをキャンディアップルレッドで統一したマッチングヘッド仕様は、2020年にも日本製で限定生産されており、フェンダージャパン時代のMG69/MH OCRや、Japan Exclusive時代のClassic 70s Mustangの系譜を継ぐモデルと言えるでしょう。
「けいおん!」であずにゃんこと中野梓(CV:竹達彩奈さん)が弾いていた「むったん」、通称「あずにゃんぐ」を彷彿させるデザインでもあります。
ヴィンテラIIIのMid60sムスタングは忠実にヴィンテージスペックを再現
さて、次はメキシコ製のモデル。数年前まで「ヴィンテージスペック=日本製」という図式だったのですが、先ほど紹介した「MIJトラディショナルシリーズ」も最近は少々モダンな方向にシフトしています。
より純粋なオールド志向が好みであれば選択肢となるのが「ヴィンテラシリーズ」です。2019年にヴィンテラ1、2023年にヴィンテラ2、2026年にヴィンテラ3とアップデートされてきました。
直近のヴィンテラ3ムスタングでは、60年代中盤の個体をラウンド貼りローズウッド指板で再現。7.25インチR指板との組み合わせで立ち上がりの早い軽やかなサウンドが楽しめますね。

「VINTAGE STYLE FOR THE MODERN ERA」というコンセプトのもと、フェンダー・エンセナダ工場で製作されているよ。
「オリンピックホワイト」にはべっこう柄ピックガードとホワイトカバー、「ダコタレッド、ソニックブルー」には光沢のあるパーロイド・ピックガードとブラックカバーが採用されています。
ヴィンテラシリーズのスペック変遷については下表にまとめたので参考にしてみてください。
| モデル名 | Vintera 60s Mustang | Vintera II 70s Mustang | Vintera III Mid ’60s Mustang |
| 発売年 | 2019年 | 2023年 | 2026年 |
| ボディ | スラブボディ | コンターボディ | スラブボディ |
| ペグ | ホワイト丸ボタン | ホワイト角ボタン | ホワイト丸ボタン |
| ネック | ’60s “C” | Early ’70s “C” | Mid ’60s “C” |
| フレット | Vintage | Vintage Tall | Vintage Tall |
| ピックアップ | Vintage-Style ’60s Single-Coil Mustang | Vintage-Style ’70s Single-Coil Mustang | Vintage-Style Mid ’60s Single-Coil Mustang |
アーティストモデル特有のユニークな仕様のムスタング製品
ここからは純粋なムスタングとは別のバリエーションです。
アーティストモデル特有の変わりダネ、個性的なアレンジを取り入れたムスタングを3本ほどご紹介します。
Charモデルはムスタングとストラトキャスターを融合させた斬新な発想
日本におけるムスタング人気を確立した立役者、Char氏のシグネチャーモデル(Made in Japan)が2019年に発売されています。
2012年にフェンダーカスタムショップから「Char Free Spirits Mustang(御召茶色)」が発売されましたが、本製品はその復刻版ではなく、新しいコンセプトで設計されたモデルです。
最たる特徴は、ストラトキャスター風のシンクロナイズド・トレモロを組み合わせているところ。
ブリッジプレート下にスプリングを設置するのではなく、ムスタングでありながらボディ背面にトレモロスプリング用のキャビティがあるのが面白いですね。
ボリュームコントロールの配置やピックガード形状まで、ストラト的な発想を大胆に取り込んだ専用設計。なかなかに「天邪鬼」なモデルといえるでしょう。

ショートスケールにも関わらず、テンション感があって低音弦までしっかり鳴ってくれると評判だね。
2025年7月にはPink Paisleyバージョンが、Fender Flagship TokyoおよびFender公式オンラインストア、ならびにZICCAにて限定販売(70本)されていました。
Ben Gibbardムスタングはアッシュボディのチェンバード構造が珍しい
続いて2021年春から発売されているベン・ギバード・シグネチャーモデルのムスタングについてチェックしてみましょう。
Death Cab for CutieのBen Gibbardモデル、MEXICO工場製でサインプリントはヘッド裏にあります。
ベン・ギバード本人がツアーで愛用しているムスタングにインスピレーションを受けたもので、チェンバード構造で軽量化、美しい木目のアッシュボディが特徴でしょう。

ピックアップ特性も実機をもとに設計されていて、ボディ内に空洞を設けたことによる奥行きのある響きが美しいよ。
写真で見ただけでは分からないと思いますが、じつはテールピースが固定されており、従来型のムスタングより安定したチューニングとタイトなサウンドを実現することに貢献しています。
さらに、一般的なスライドスイッチが付いておらず、「ダミーのトーンノブ、ロータリスイッチ方式のピックアップセレクター」となっているのも彼のこだわりだそうです。
ピックガードとのコントラストがあるナチュラルカラーで、近年は稀少になっているアッシュ材の木目が映えるムスタングになっていますね。
Chilli Beans.のMotoモデルはオルタナやポップス系バンドにもおすすめ
最後の一本は、2025年10月に発売されたChilli Beans. のMotoモデルです。チリビーンズ(チリビ)は2023年に「Fender NEXT」という次世代アーティスト支援プログラムに選出されています。
ボディとヘッドをブラックに統一したマッチングヘッドの精悍な佇まい、5フレットと12フレットのインレイが各弦の音名をモチーフにしているのが個性的ですね。
軽量なポプラ材ボディのムスタングで、歪みノリの良いハムバッカーを搭載。セレクタースイッチはライブで扱いやすい3wayスイッチ仕様で設計されています。

オルタナやインディーロック、J-POP系のバンドサウンドに合わせやすいね。
プレイアビリティに優れた12インチRのフラットな指板とミディアムジャンボフレットを組み合わせ、ロック式ペグを標準採用していることによるチューニングの安定性、弦交換のしやすさも好評です。
本製品はヘッド裏を見ると「Designed in California, Made in Indonesia」と記載されていますね。最近はインドネシア工場製のフェンダー製品がリリースされて話題になりました。
2025年に発表されたFender Standardシリーズに準じる生産ラインで、コストパフォーマンスの高さを追求したモデルといえるでしょう。
まとめ
以上のように「初心者向け~モダン路線のハードテイル仕様」「王道ヴィンテージ路線のダイナミックトレモロ仕様」「その他アーティストモデル」で分類すると候補を絞りやすくなる思います。
ムスタングモデルは新製品の追加も盛んですが、Player Series Mustang 90や、American Special Mustangの後継モデル的な位置付けのAmerican Performer Mustangなど一部縮小・終売傾向も見られるため、気になる機種は早めにチェックしておくのがおすすめです。
以上、最後までご覧いただきありがとうございました。
スマホですぐに使える!オンラインチューナーとギターコード表を公開しました!











