サウンドホールがハート型になっているかっこいいアコギを見たことがあるんだけど、あれってどこのメーカーなんだろう…?
ハートをモチーフにしたギターはいくつか存在するのですが、見かける頻度から推測するとゼマイティス製品の可能性が高いでしょう。
既に生産完了となっている機種がある一方で、2022年2月に新製品も発表されましました。
この記事ではZEMAITISブランド最新のラインナップをご紹介してみたいと思います。以下に探していたモデルがあるかチェックしてみてください。
ZEMAITISのアコースティックギターについて
ZEMAITISでは、2022年7月現在でハート型サウンドホールのアコースティックギターが9種類ほど発売されています。
カラーバリエーションもあるので、それを含めると現行機種は合計18モデルのラインナップです。
ゼマイティス(ゼマティス)というと、高い技術力と美的センスで華やかな彫金のメタルプレートやパールインレイをあしらったエレキギターのイメージが先行するかもしれません。
しかしルーツをたどると、創業者トニー・ゼマイティスは幼いころから独学でアコースティックギターの修理・製作を学んでおり、家具職人として木工技術を培ったキャリアがあります。
特に最も有名なアコギでは1969年作品の「Ivan the Terrible」があり、エリック・クラプトンの旧コレクションとして、ハート型のデザインが放つアーティスティックな世界観がすさまじいです。
そのような経緯もあり、ハートシェイプのアコギは今日にいたるまで、ゼマイティスブランドを象徴するモチーフのひとつとして人々を魅了し続ける代表製品になっています。
ジミヘンが弾いていた12弦ギターもじつはゼマイティスなんだよ。
スタンダードなエレアコCAF-80Hがギター初心者にもお手軽で人気
それでは、さっそく現行機種をチェックしていきましょう。
まずは最もオーソドックスなモデルとしてZEMAITIS CAF-80Hが定番になっています。2020年6月に発売された製品で、サウンドホール周囲に合計11個のハートをちりばめたデザインです。
写真だと分かりにくいかもしれないですが、比較的小ぶりなサイズ感でひとつひとつのハートにきれいな光沢があります。
「ナチュラル」の他に「デニムブラック、フォレストグリーン」といったカラーバリエーションも出ていて、(塗りつぶしではなく近くで見ると木目が分かる)自然な質感のサテンウレタン塗装が好評。
紳士の口ひげを彷彿させる「マスタッシュ・ブリッジ」も特徴的だね。
本製品は「フォワードXブレーシング」といって、ボディトップを支える力木の交差部分を前方シフトされています。
表板が振動しやすく、豊かな生鳴りが得られるように工夫されているのがポイントといえるでしょう。
さらに、お手頃価格でありながら結構しっかりしたロゴ入りギグバッグが付属しているのが嬉しいですね。
シトカスプルース材のトップ板は「真空状態での加熱処理」を行うことで安定性・剛性が高められています。
カッタウェイ付き製品のCAF-80HCWは高音側も弾きやすいモデル
続いて2020年12月に発売された製品ZEMAITIS CAF-80HCWです。
上述したCAF80Hとの主な違いは、モデル名に入った「CW」の文字が表す部分で、高音弦側に「カッタウェイ・シェイプ」が採用されているところ。
「カッタウェイ」はネックジョイント付近を見比べてもらうと分かりやすいですが、ハイポジションまで弾きやすくするための構造です。
基本仕様は変わらず全20フレットの設計で、14フレット部分でボディとネックがジョイントされています。
ソロギターやリードを取る機会が多いプレーヤーにおすすめだよ。
前述のCAF-80Hと同様、ブリッジサドル(駒)の底面部にピエゾピックアップが搭載された「エレアコ」になっているのも特徴。
ショルダー部分に搭載された「プリアンプ」によって、「トレブル・ミドル・ベース・プレゼンス」の帯域別に音色の調整が可能です。
エレアコだとライブや録音に活躍するのはもちろん、液晶画面にクロマチックチューナー表示があるのも重宝しますね。
パーラーサイズのアコギCAM-80Hは価格も安くなっているのが好評
そして2020年12月に発売されたZEMAITIS CAM-80Hというバリエーションも存在します。
先に挙げた二機種も「オーケストラモデル」に分類される比較的小型のアコギなのですが、本製品はさらに小さな「パーラーサイズ」となっています。
メーカー希望小売価格はオープンプライスですが実際の販売価格も他機種より少し安いですね。
それぞれの楽器サイズを比較してみると下表の通り、3センチほど短いネックスケール(弦長)に合わせて全体的にダウンサイズされているのが分かります。
パーラーサイズ版は、かわいらしい丸ボタンのペグに要注目だよ。
型番 | CAF-80H | CAM-80H |
弦長 | 630mm | 600mm |
ボディ長 | 490mm | 436mm |
ボディ幅(上部) | 282mm | 265mm |
ボディ幅(下部) | 392mm | 355mm |
ボディ厚(上部) | 96mm | 89mm |
ボディ厚(下部) | 108mm | 104mm |
ナット幅・フレット数や木材の種類、弦の太さなど主要スペックはCAF-80H系を踏襲。
「ナチュラル、デニムブラック、フォレストグリーン」といった色展開も同様ですが、CAM-80Hに関してはエレアコではなく「純アコースティックギター」となっていることに注意しておきましょう。
※「ミニギター」と分類されていることもありますが、ミニギターとしては大きめの位置付けです。他社製品の弦長も別記事でご紹介しているので参考にしてみてください。
もう一回り大きなCAG-100HS-Eが2022年2月の新製品として登場
続いては2022年2月に発売されたグランドオーディトリアム版ZEMAITIS CAG-100HS-Eについて追記しておきます。
「既存のモデルより一回り大きい」とはいっても、CAFシリーズ・CAMシリーズよりワンサイズ大きいだけで、アコギの中ではまだ小ぶりな方の分類です。
カラーバリエーションは「ナチュラルとフォレストグリーン」で、前述のモデルよりは販売価格が少し高くなります。
とりわけ目をひくのがハート型のサウンドホールに美しいアバロンロゼッタの装飾が施されている部分。これは一気に高級感が増してきますね。
サイズに関しては、こちらも最初に挙げたCAF-80Hを基準に比較するのが分かりやすいでしょう。
型番 | CAF-80H | CAG-80HS |
弦長 | 630mm | 648mm |
ボディ長 | 490mm | 504mm |
ボディ幅(上部) | 282mm | 293mm |
ボディ幅(下部) | 392mm | 402mm |
ボディ厚(上部) | 96mm | 95mm |
ボディ厚(下部) | 108mm | 120mm |
ボディやネックの長さ・幅だけでなく、楽器本体のボトム側に厚みがあるのが顕著だね。
スペック的には前述の各機種と共通する部分も多いですが、プリアンプは「L.R. Baggs Stagepro Element」で差別化。液晶画面はないもののチューナー機能は付いているのが重宝します。
エレアコ仕様でありながら、生音にもこだわった「カッタウェイなし19フレット仕様のデザイン」が採用され、なかなかリッチでハリのある響きが楽しめる製品です。
日本製のゼマイティス上位機種アコースティックのラインナップ
以上はお手頃な海外工場製でしたが、ゼマイティスのアコースティックギターにはプロギタリストにも愛用される日本製モデルが上位機種としてラインナップされています。
ジャンボサイズのほうが「AAJ」、スモールサイズのほうが「AAS」を冠した製品名ですね。
全てのモデルに「ハイフンE」が含まれているのはエレアコ仕様であること示しており、「フィッシュマンMatrix Infinity VTピックアップ/プリアンプ」が搭載されました。
ジャンボサイズは2機種あってAAJ-1000HSD-EとAAJ-3000HW-E
現行機種の日本製ジャンボサイズは存在感のある約17インチ幅で、2021年2月に発表されたモデルが二機種あります。
AAJ-3000HW-EとAAJ-1000HSD-Eは、ともにシトカスプルーストップ・オール単板仕様で、1000番台はマホガニーボディ、3000番台がローズウッドボディで製作されています。
音色的には、マホガニーボディ(1000HSD)の方がふくよかで甘め、ローズウッドボディ(3000HW)の方が端正で上品なサウンドに聞こえるという方が多いでしょう。
彫金されたアルミのヘッドプレートが、いかにもゼマイティスっぽい雰囲気だね。
ルックス面ではポジションマークのデザインが違う他、AAJ-1000がマザーオブパールのドットインレイ、AAJ-3000がハートとダイヤの木象嵌(もくぞうがん)によるウッドワークを採用。
エレアコ仕様でありながらボディ本体への加工が最低限で済むように、いずれもサウンドホール側面にコントロールが配置されていますね。
スモールサイズはAAS-3000HW-Eに加えて、AAS-1500HPD-EとAAS-1000HPD-Eも登場
スモールサイズの上位モデルは3機種ラインナップされており、フラッグシップモデルは2021年2月に発売されたイングルマンスプルーストップのAAS-3000HW-Eです。
グッと引き締まったシェイプになって15インチ幅のデザイン。ピッキングのレスポンスもタイトな印象になってきます。
先に挙げたAAJシリーズと同様に、ヘッドやネック周りにフレイムメイプル材のバインディングがあしらわれた気品を感じさせる仕上がりですね。
弦長25 1/2インチ(約648ミリ)とジャンボサイズ共通のスケールでサウンドにハリがあり、伝統的なダヴテイル方式のマホガニー材ネックで製作されています。
なお、もう少しお手頃なバリエーションとしては、2021年6月新製品AAS-1500HPD-Eと、2021年7月新製品AAS-1000HPD-Eも追加されています。
1500番台がエボニー指板・ローズウッドボディ、1000番台がローズウッド指板・マホガニーボディというグレード分けだね。
シトカスプルーストップのオール単板仕様で、ボディバインディングはべっこう柄、両機種ともナチュラル以外にブラックのカラーオプションが用意されています。
「AAS-1500HPDやAAS-1000HPD」は、装飾が控えめなこと以外は既存のスモールシェイプと同じに見えますが、じつは演奏性を向上させるため約5mmほどボディ厚が薄くアレンジされているところが見逃せません。
まとめ:ギター弾き語り動画でも印象に残りやすいハートモチーフ
以上、ハート形状のサウンドホールが特徴的なギターとして、ゼマイティス9製品の違いを解説してみました。
全てチェックしていくのは大変ですが、まずはある程度予算で候補を絞るのが現実的なところでしょう。特に序盤のCAF/CAMシリーズはお手頃価格なのでギター初心者の方にもおすすめしやすいです。
SNSなどに弾き語り動画を上げたり配信をするときに、アイキャッチになるサウンドホールのデザインは見てくれた人の印象に残りやすいですよね。
いずれの製品もゼマイティスならではの、ほのかにアンニュイなボディシェイプが絶妙。
「PlayG!」という代理店直営のサブスク/レンタルにも一部取り扱いがありますので、それぞれの比較、選び方の参考にしてみていただければと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。