自宅練習用のギターアンプが欲しいけど、「あまり大きな音量は出せない」「一人暮らしでアンプを置くスペースが取れない」なんてときに重宝するグッズがヘッドホンアンプ。
「ヘッドホン端子を備えたギターアンプ」を用意するのではなく、「ギターアンプを使わずにヘッドホンをつなぐための機材」があるんです。
通常のエレキギターの場合、ヘッドホンで練習しようとしても、ギターのジャックにプラグを挿すだけでは音が聞こえません。
ピックアップ(マイク)が拾う信号は微弱なため、直接ヘッドホンケーブルをつなぐだけではダメで、「ギターの出力をAmplifier(増幅・拡大)するための機材」が必要になってくるということですね。
入力端子の仕様が一緒であれば、イヤホンも使えるので時に「イヤホンアンプ」と呼ばれることもあります。
本記事でご紹介するのは、ギター店員視点でおすすめのヘッドホンアンプとして「エレキギターのジャックに直接接続できるタイプに絞り込んだ4選」です。
「エレキギター用ヘッドホンアンプの使い方・つなぎ方」は上画像のように、ギターのアウトプットジャックにヘッドホンアンプを接続して、その端子にヘッドホンのプラグを直挿し(ちょくさし)するだけと非常にシンプル。
通常のギターアンプ・ミニアンプ類と違い、スピーカーは付いていないのが特徴で「シールドケーブルが不要」になります。これは予算的にも嬉しいですよね。
普段使いしている3.5mm端子のヘッドフォンやイヤフォンを流用できるので、ギター歴を問わず愛用している人は多いです。さっそく具体的な候補を見ていきましょう。
スピーカー付きのギターアンプは別に持っているけど、カジュアルに練習するときはヘッドホンアンプで代用するという人もいるよ。
フェンダーのムスタングマイクロは2021年4月発売から不動の人気
近年のフェンダー社は「ギター本体だけでなくデジタル製品にも注力」していて、2023年10月にはデジタル・サウンド・プロセッサー「TONE MASTER PRO」が話題の新製品になりました。
以前よりモデリング技術に意欲的な取り組みを行っていることは明らかで、2021年4月に発売されたFender社のヘッドホンアンプ「Mustang Micro(ムスタングマイクロ)」は長いこと品薄が続いていました。
製品画像で分かるように正面にダイヤル風のノブ、側面にシンプルな「+-ボタン」が配置されているので、「機械オンチで使い方が不安…」というビギナーさんでも直感的に操作できるでしょう。
この物理スイッチでクリーンからハイゲインまで12種類のギターアンプモデリングを切り替え、簡易的にイコライザーの調整が可能。
ギター本体とヘッドホンアンプの無線接続はできないですが、Bluetoothでオーディオ音源を流せるので、マイナスワンのバッキングトラックを使う個人練習の際に便利ですね。
Fender Mustang Microのエフェクター機能で、リバーブやコーラス、フランジャー・トレモロ・ディレイを組み合わせた効果も付与できるようになっています。
使い捨て乾電池ではなく、USB-C端子で充電可能なリチウムバッテリーは約4時間駆動。パソコンにつなぐオーディオ・インターフェイスとしても機能するようになっているのが特徴です。
タイミングによってプレミアム価格(プレ値)で高騰していることがあるので、複数ショップ・各モールごとの販売価格や納期を見比べてみてね。
フェンダー公式サイトでは、長屋晴子さん(緑黄色社会)や山岸竜之介さんによるムスタングマイクロのレビューが掲載。
プラグは270度回転するのでストラトキャスターのような舟形のジャックプレート、テレキャスターやレスポールのようなサイドジャックでも安心です。
高さ8cm、幅3.81センチ、奥行き2.87cm。重量が約51g。
スマホアプリ連携のNUXマイティプラグには昨秋からの新製品も登場
続いて、ひときわモダンな装い。NUX社のヘッドホンアンプ、「Mighty Plug(マイティプラグ)」は現行品が2種類あります。
無印のMighty Plugが「MP-2」で、後発品のMighty Plug Proが「MP-3」という型番になっています。
国内発売された時期は上記のMP2が2020年12月、下記のMP3(プロ)が2022年10月と約2年越しのアップグレード。
ガジェット慣れしている方や、アプリ操作がメインとなるデバイスに抵抗がなければ、オールインワンで細かな音作りができる有力な選択肢でしょう。
NUXは「ニューエックス」と読み、中国の大手楽器メーカーCherub Technology(チェルブ・テクノロジー)傘下にある2006年創業のブランドです。
MP-3から筐体側面の物理ボタンでボリューム調整ができるようになったものの、MP-2もMP-3もiOSとAndroid双方に対応したモバイルアプリでスマホやタブレット端末から操作することが前提のつくりです。
アンプモデルやIR(インパルスレスポンス)によるアンプ・キャビネットサウンド、エフェクト機能の組み合わせについては新製品マイティプラグProのほうが大幅に増えてじつに多彩なバリエーション。
「荒井貿易」が輸入代理店となっていて日本語サイト・説明書も見れるのですが、もし時間があれば上記のNUX公式サイト(英語)をチェックすると一層細かなスペックやイメージが掴みやすいでしょう。
MP-3(マイティプラグプロ)ではヘッドセットの音声入力対応など嬉しい改良が行われている一方、旧機種Mighty Plug MP-2も価格がお手頃な分、引き続き根強い人気を維持しています。
リリースからさほど時間が経っていないMP-3と、お手頃なセール価格になっていることも多いMP-2、ここは懐事情と相談しながら比較検討してみてください。
充電式のリチウムバッテリーで旧製品が約3時間、新製品が約5時間の連続駆動ができるようになっています。
どちらもUSBケーブルを介して、エレキギターをパソコンに接続するインターフェイスとすることが可能。MP-2はType-B端子、MP-3はType-C端子となっております。
Bluetoothのワイヤレスで伴奏オーディオを流せる他に、ドラムビート(リズムマシン機能)とメトロノームまで搭載されているのが日頃の練習に活用しやすくて便利です。
MP-2:長さ8.1cm、幅4.1cm、高さ3.1cm。重量が約62g。MP-3:長さ8.1cm、幅4.1cm、高さ3.0cm。重量が約70g。
ヘッドホンアンプ代名詞VOXアンプラグがコストパフォーマンス良好
それからVOX社の「amPlug2(アンプラグ2)」は、エレキギター用のヘッドホンアンプとして代表格の製品でしょう。
長寿製品なうえ、お手頃な価格設定も相まって、ヘッドホンアンプのカテゴリでベストセラー1位の常連となっています。
VOXはミニアンプの分野でも定評がありますが、amPlugは初代が2007年に発売されて以来のロングセラーで、かつてはアニメ「けいおん!」とのコラボ商品が展開されていたのも懐かしいですね。
2023年4月からは「amPlug Brian May」として、Queen ブライアン・メイのモデルも発売されました。
ボックス(ヴォックス)製品は先に挙げたヘッドホンアンプ2機種と異なり、アナログ回路を採用しているのが特徴ですね。
筐体のサイドに電源スイッチが配置されていて、上面にあるホイールでボリュームやトーン、エフェクト(コーラス、ディレイ、リバーブ)を操作します。
アンプラグにも色々と種類があるのですが、最もスタンダードなのは伝統的な真空管のVOXアンプサウンドをモチーフにしたAC30モデル。
他にもエレキギター用では、「クラシックロック、メタル、リード、ブルース、クリーン」といったバリエーションも好評です。
旧モデルと異なり、プラグ部分が5段階180度回転するようになったよ。
こちらはエフェクトオフの状態であれば「アルカリ単4乾電池2本で約17時間駆動」とアナログならではの燃費の良さが嬉しいところ。
下画像のように、本体側面部のAUX IN端子にステレオミニケーブルをつないで音源を流せる便利な練習機能を備えています。
幅8.6cm、奥行3.8cm、高さ3.1cm。重量が約40g(電池含まず)
必要最低限の機能で予算を抑えたいときにはJOYO JA-03も選択肢
最後に、なるべく出費を抑えたい方には中国の深セン市に本社工場を構えるエフェクターメーカー・JOYO社の「JA03(ジェイエーゼロサン)」というヘッドフォンアンプをおすすめしておきましょう。
ジョーヨーは、リーズナブルな価格帯のクリップチューナーなどが有名ですが、これまでかなり広範なバリエーションのアンプ・エフェクターを生産してきました。
価格相応それなりの音質グレードではあるものの、「歪み具合・サウンドキャラクター別に3種類」のラインナップがリリースされています。
エレキギター王道路線なら「チューブドライブ」、ハードロック系ディストーションが好みなら「スーパーリード」、ヘヴィな低音リフを刻みたいなら「メタル」を選んでみてください。
コントロールは必要最低限に絞った設計で、ゲイン・トーン・ボリュームのみ。VOXアンプラグに近い操作感ですね。
このくらい安い価格帯のヘッドホンアンプでは、ノーブランドに近い類似品も様々登場していますが、JOYO正規品に関しては6カ月のメーカー保証が付いているのも強みでしょうか。
幅8.5cm、奥行4cm、高さ2cm。重量が約41g(電池含まず)
まとめ:生音で練習して変な癖がつかないように注意
以上、エレキギターの夜間練習やスタジオの待ち時間などでも重宝する4つのヘッドホンアンプ(イヤホンアンプ)をご紹介しました。
ピッキングやミュートの実践練習はギターアンプで鳴らすに越したことがないですが、「生音で練習して上手く弾けているか分からない・力みで悪い癖が付いてしまう」よりヘッドホンアンプを活用するのが断然おすすめ。
NUXはデジタルデバイス、ガジェットに不慣れな方だと大変だと思いますが、その他はいずれも操作が簡単なので年配の方へのプレゼントとしても喜ばれるかもしれません。
ちなみに「手持ちのヘッドホン/イヤホンを流用する」のではなく、ヘッドホンまであらかじめセットになっているタイプの方が便利そうという方には、VOXやBOSSに製品のラインナップがあります。
まず、オーディオテクニカのヘッドホンを採用した「VOX VGH-AC30」のバリエーション。それから、決して安くはないですが、ギターとヘッドホン接続がワイヤレスで行えるBOSSの技エアー「WAZA-AIR」が売れ筋です。
「やっぱりスピーカーから音出ししたい!」という方向けには超小型卓上ミニアンプについて別記事で解説しているのでご覧ください。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。